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第129話
ゆっぺ
立っているだけで絵になるイケメン。
一年生の使う廊下なので、宮ノ内先輩に話し掛けられる生徒は当然いなくて、回りは遠目で見ている。
整った顔から表情は読み取れず、前髪の間から覗く瞳と薄い口元が色っぽい。
菊池先輩とはまた全然違うオーラを醸していて少しコワイ。
い、今の話、聞いてましたよね。
あはは……
「そんなに塗りたくったの?霧緒」
面白そうに菊池先輩が宮ノ内先輩に絡んでる。
この先輩二人、仲良さそうだなぁ。
「す、すみません!俺が萩生に変な話題振ったんです!つい宮ノ内先輩の話ってなかなか聞けないから面白くって!なぁ?なっち!」
「え、あ?そうなんす!そうなんす!ついついっす!」
「……まぁ別にいいけど。それ、本当だし」
「そうなんっすね、親切っすね。宮ノ内先輩」
「親切とかじゃなくて、ムカついたから塗りたくってやっただけ」
「萩生そういうのマメに出来なそう……」
ぽそっと呟くと、チラリと宮ノ内先輩が俺の方を見た。
わ!目が合った!
あ…あ…ヤバい妊娠しそう!!
「あいつ、そういうの無頓着だからな。必要ないって決めつけるとこあるって頑固だし。だから強制的に塗ったわけ」
へー萩生って頑固なんだー。
あいつ明るくて優しいし、回りに合わせてくれるイメージがあるからなんか意外。
まさか宮ノ内先輩から萩生の新情報が聞けるとは!
「頑固な萩生が、今はちゃーんと塗ってるってさ、教育の賜物だね」
宮ノ内先輩を肩でツンツンする菊池先輩。
この二人が並んでると、何か凄いぞ。
写メしたい。連写したい。
「あ、菊池せんぱーい!」
声がした方を見ると、屋内がこちらに歩いてくる。
その少し後に、ゴミ箱を抱えた萩生。
「やっと来たな。屋内、もう用事済んだ?」
「うん、もう終わったけど。今日何かあったっけ?」
「いやーただ迎えに来ただけだよ。こっちとはたまたま一緒になっただけ」
こっち……と、宮ノ内先輩を指差す菊池先輩。
「わ、何か手に黒いのついた。これ落ちるかな」
ゴミ箱を片付けた萩生が、手をヒラヒラさせながら屋内に声をかけている。
「どうだろねー。石鹸で洗って来なよ」
「ん、そうする!菊池先輩待ってるし、んじゃまたなー!??ってあれ?坂口と仲島どしたの?」
先輩たちと一緒にいる俺たちを、不思議そうに眺める萩生。
「あーお前らがゴミ捨てに行ってる間、ちょっと先輩たちと話してただけだよ。ゆっぺー!俺たちも帰ろうぜ」
「う、うん、そだな」
「へーそっか。んじゃまたな!キリ先輩、手洗って来るから、しばしお待ちを!」
萩生は手をヒラヒラさせながら、近くの水道で手を洗いに行ってしまった。
屋内と菊池先輩は早々に二人で帰って行ってしまった。
へー!菊池先輩と屋内ってそんな関係だったの?びっくりだ!これは屋内にも色々聞きたい。
宮ノ内先輩は、ふらっと教室に入って萩生の席へ。
机の上に置いてある萩生の鞄を手にする。
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