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第329話*

霧緒 「ふぅ……」 …… ここは三年の教室。 ため息が聞こえるなんて、今の時期は仕方のないことだけど、珍しい奴がするものだとチラリとそいつの顔を眺めてしまった。 菊池宗太、18歳。 冴えない親友の横顔を見つめながら、じわりと距離をつめると、向こうも気がつき視線をこちらへと向けた。 「……」 「……受験……」 「……」 「の、ため息じゃぁないよなぁ……」 「……うるせ」 「たまってんじゃねーの?」 「あのなぁ、今それどころじゃねーだろ」 「第一志望受かってんだから別にいいだろ真面目かよ。屋内と会ってんのか?」 「……」 「……修行僧?ついに仙人にでもなるのか?」 「あー!うるさいなっ!全部終わるまでヤらねぇって決めてんだよ!!」 教室の中心でそう叫ぶ宗太に、その場にいたクラスメイトの視線が集まる。 ヤるってあれですよね?やだ菊池~みたいなニヤけた雰囲気に、教室中がなってしまった。 ……相当きてんな、こいつ。 珍しく無表情の宗太の肩を軽く叩き、二人で廊下へ移動した。 普段はおおらかな性格で、面倒見がよいこいつの悪いところが今出でいる。 真面目過ぎるところだ。 一度こうと決めたことは途中で曲げられず、変なところで柔軟性に欠ける。 自分はそれで良いかもしれないが、屋内からしたらいい迷惑だろう。 「もう試験も終わるんだから、ちゃんと会ってやれよ?連絡はしてんだろ」 「……してねぇ」 「……」 「はぁ……向こうも気を使ってくれて、連絡は控えてるみたいだし、俺もそんな余裕なかったから。もし落ちたらって思ったらカッコ悪いし……情けないけど、なんか全然余裕ねぇ……」 「会いたい時に会えばいいだろ」 受験だから試験勉強しているときはあれだけど、俺は会いたいと思ったら会うし、ヤりたいと思ったらヤりたい。 思い切り詩を堪能して、気持ち良くなって気持ち良くしてあげて、あわあわする恋人を目一杯可愛がってやりたい。 「……って思ってんだけど、あいつの方から受験終わるまではエッチ駄目禁止令が出ていて、俺もお預けくらってんだけどな。セックスの一つや二つしたくらいで落ちてたまるかよ」 「……お前って変わったようで、そういうとこ全然変わってねぇな。たまにお前が羨ましくなるわ。なぁ、萩生のあわあわするってどんな感じよ?」 …… 「教えねぇ……」 「うわぁ。やだわー!ケチー!えろー!スケベー!」

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