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第3話 類は友を呼ぶ②
類は友を呼ぶ。
俺の周りには馬鹿な連中しかいない。
人を殴る馬鹿と、人を利用する馬鹿と、人に依存する馬鹿。
その馬鹿共が、全員俺のバンドメンバーなんだから、笑える。
本当は夜に働いた方が、時給高いんだよ。
でも、夜はライブと飲みで予定空けとかなきゃいけないんだ。
飲むの嫌いなんだよ。
酔っ払って自我を失ってる奴を見ると、同類だと思われたくなくて一気に酔いが覚めるんだ。
俺は大好きなことをやりたいだけなんだ。
音楽がやりたい。
音楽で食べていきたい。
ファンと飲みたい訳でもないし、ファンとヤリたい訳でもない。
好きなことだけしたいのに、何でこんなに上手くいかないんだ。
コンビニは最低賃金なのに、やることが多い。
面倒臭い客も多い。
タバコの銘柄なんて、吸わないから分からない。
なのに難癖つけてくるんだよ。
俺の言葉が聞こえないなら、会計の時にイヤホンなんか付けてくるな。
年齢確認したくらいでキレるなよ。
そういえば、あいつもいたな。
いつも唐揚げ弁当買っていく奴。
毎日買っていくから、気になって俺も買ってみたら、めちゃくちゃ美味かった。
このコンビニは大嫌いだけど、唐揚げ弁当だけは好きになった。
なのに、それを当の本人に伝えたら、次の日からコンビニに来なくなった。
今日で1週間経つ。
俺が喋りかけたからだろうな。
いかにも根暗って感じだったし。
嫌だったんだろうな。
類は友を呼ぶって言うけど、たかが唐揚げ弁当が美味いと思ったくらいで、仲間意識を抱いていた俺が馬鹿だったのか。
店にいるのは、タバコ臭い馬鹿と、順番待ちの概念がない馬鹿と、雑誌をタダ読みする馬鹿と、あとは。
商品がどこに置いてあるのか、全部熟知している馬鹿。
「あ、お久しぶりです。」
そして、話しかけても返事が返ってこないことくらいわかってるのに、それでも尚話しかけてる俺も、馬鹿だ。
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