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 それから半年後――  「晴行は数百年人間達が恐れ続けた「人食い鬼」を懐柔し妖や悪霊を祓わせている」との噂が広がり、晴行の陰陽師としての評判は更に高くなったらしい。  人間がどんな想像をしているのかは分からないが、概ね間違ってはいないだろう。  人間の男女で言えば婚姻関係にあるが、それと同時に契約を結んで式鬼として使役している。と言うより、半ば強制的にさせられている。  我が1枚の札に姿を変え、常に晴行と共に行動するようになってから、晴行が来るのを待つ時間が無くなった。来訪を待つ楽しみは無くなったが、人間の寿命は短い。その短い寿命を会えないまま消費するよりは多少不便だろうと傍にいる方が遥かに良いと思う。それを伝える気は無いが。      朝からせっせと我の髪を櫛で梳く晴行をちらりと見た。 「痛かったですか?」 「いや」 「では、どうしました?」 「別に。まだ終わらないのか」 「ええ」  適当にしてしまうわけにはいきませんから、と櫛を置いた晴行は今度は髪油を取り出す。 「貴様は我の従者ではないはずだ」 「私以外の誰にも貴方に触らせたくないのです」 「ならば今すぐこの髪を切り落としてしまえば良い」 「私に髪を梳かれるのは嫌いですか?」  晴行はやっと手を止め、我の顔を見た。 「これでは、我には貴様の顔が見えないではないか」  そう告げれば、何が可笑しいのか、晴行は満面の笑みで笑った。

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