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第41話 二人の関係
「じゃあ、行ってくるね」
「はい、行ってらっしゃいませ」
部屋の中で、この言葉を交わしてキスを交わす。
「今度のお休みに、メイソンのお母様と妹さんに会いに行こうね」
メイソンの身体に抱き着き、アルトが幸せそうに呟く。
「本当に……何も無い荒れた領地ですよ」
苦笑いをして答えるメイソンに、アルトは微笑んで
「それでも、メイソンが守り続けた領地を見られるのは楽しみだよ」
と答えた。
あの日から、メイソンの寝室はアルトの隣になった。
毎晩、激しく求め合うのに、神事だからなのか、疲労が残る事は全くない。
むしろ、怪我や病気の類の治りが早く、さすが神子との神事と言われるだけあり、人間業では無いな……とメイソンは思っていた。
アルト自身も、あの日以来、メイソンが居ないと眠れなくなっていた。
しかし、メイソンからは二人の関係は秘密にして欲しいと言われていて、アルトは少しだけ面白くない。
別に悪い事をしている訳では無いのに……と考えているのだが、公爵家の……しかも神子に手を出したとなれば大事になるのはメイソンには分かっていた。
王家の王子が、喉から手が出る程アルトを欲しているのに、高々、地方を任されているに過ぎない伯爵家の人間が、アルトの言うところの「恋人」などという関係になったと知られたら、メイソンは即刻クビになるのは目に見えている。
メイソンはまだ幼い、貴族階級の知識も乏しいアルトに、どう教えなければならないのかを考えていた。
人を階級や出身で判断しない性格は素晴らしいが、それではこの世界で生きては行けないのもメイソンは分かっているから辛かった。
純粋に自分を慕い、真っ直ぐに愛してくれるアルトの思いは嬉しいし、メイソン自身もアルトを大切したいと思っている。
でも、お互いの気持ちだけではどうにもならないという事を、メイソンは嫌と言う程知っていた。
毎晩、どんなに求め合ったとしても、決して結ばれる事の無い恋だとメイソンは自分に言い聞かせていた。
「愛」だとか「恋」だとか、浮ついた感情は自分達には必要の無い感情なのだと、メイソンはそう考えて生きていたから、今、自分の心を占めている感情にまだ戸惑っていた。
アルトはアルトで、メイソンからの愛情は感じているのに、何故、メイソンは一歩引いているのか謎だった。
そして、そんな時は#腐女子__マリアンヌ__#の出番だと、アルトは相談に乗ってもらっていた。
自分で書いていた作品だが、前世では日本に居たアルトには、やはり階級制度の事に関してはまだ疎すぎているのを痛感をし始めていた。
メイソンへの気持ちを自覚してから、もっと傍にいて欲しい。
もっと自分を愛して欲しい。
もっともっと……と、感情が止まらなくなってしまったのだ。
何度も言うが、前世では男関係に全く縁の無かったアラフィフのアルトにとって、相手から愛される恋愛は初めてで、どんどんとメイソンに溺れてしまったのだ。
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