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祐樹が入れた曲のイントロが流れると「おおー」と中国人スタッフから驚きの声が上がって一気に盛り上がった。
なるほど、と思う。こうやって盛り上げて、コミュニケーションが円滑になっていくのか。うまく歌詞が読めなくて祐樹が詰まるとみんなが一緒に歌ってくれて、和気あいあいとした雰囲気で曲が終わった。
「高橋さん、こういう曲聞いてるんですか?」
「上野くんが教えてくれたんだ」
「そうなんだ。上野さん、歌もドラマも色々知ってますよね」
中国人スタッフとそんな話をしているのか。そう言えば流行の歌手やドラマなんかも孝弘はよくチェックしている。
話題つくりなのか中国語の勉強なのか、単なる趣味なのか。
部屋で一緒に過ごすから、つられて祐樹も最近見ているドラマがある。日本と違ってほとんどが30話以上、長い物なら200話くらいあるのでかなり見応えがある。
「こっちのドラマ、展開が早いから面白いね」
「展開が早い?」
「週に2回も放送するでしょ、しかも一度に2話ずつとか」
「? 日本は違いますか?」
「週に1回1話ずつが基本だよ」
「それじゃあ話を忘れませんか?」
「話と言うより見るのを忘れる」
祐樹の言葉にみんなが笑うが、冗談を言ったわけでもなかった。そんなにドラマ好きではないせいか、途中で見忘れてしまうことがほとんどで最後まで見たのがあったかどうかも怪しい。
その後は日本のドラマやアニメの話になり、日系企業で働くくらいだからみんなよく知っていて、誕生会は楽しく盛り上がって解散した。
「お疲れさま」
温かい玉米茶《ユィミィチャ》(コーン茶)を出されて、マグカップを受け取った。香ばしくてほんのり甘いお茶だ。
「うん、喋りつかれた」
北京語で長時間話すと普段使わない舌使いや発音をするせいか、口の中が疲れたなあと感じるのだ。じいんと舌が疲労している感じだ。
「祐樹の北京語、だいぶ上手になったよな」
「そう? 孝弘の指導のおかげかな?」
「えー? そんなに教えてないだろ」
「うん。でもやっぱ聞く機会が増えたよ」
確かにきちんと教えてもらっていないが、一緒に過ごすうちに自然と耳に入ってくることは多い。祐樹が広州駐在だったころは部屋のテレビはたいていBBCか日本の衛星放送だったし、中国ドラマもあまり見なかった。
でも大連に来てからはテレビはCCTV、ドラマや映画も北京語で見る孝弘につられて見るので、いつの間にか俳優の名前や歌手も覚えて、祐樹の北京語能力はアップしている。
「孝弘に教えてもらうまで、裁判をテレビ放送してるとかも知らなかったし」
「ああ。あれ、けっこうびっくりするよな」
裁判所での審理をテレビで生放送していると聞いた時は本当に驚いた。どんなものかと何度か見たがそれほど面白くはなかった。ただ原告も被告も堂々と自分の主張をするところは中国らしいというべきか。
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