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 翌日、会社から帰ってきた孝弘がスーツのまま、祐樹の部屋にやって来た。 「祐樹、月餅まだある?」  突然そう訊かれて面食らう。 「あるよ。食べるの?」  まだまだ賞味期限はあるがそんなに好きでもないし、どうせ食べきれないからもう捨てようかと言う話をしたのは三日前のことだ。  でもやはりもったいない気がして捨てられないままになっていた。 「いや。引き取りたいって人が現れたから、全部渡そうと思って」 「え、嘘。だれ?」 「児童福祉施設っていうか、孤児院というか、の職員さん」 「あ、そうなんだ」 「おやつに食べるから手つかずなら欲しいって」 「マジで? 全部持って行ってもらおう」  積んでいた月餅はすべて引き取ってもらえた。 「よかったね。無駄にならなくて」 「来年は最初から箱は開けずに全部あげよう」 「うん。そうしよう」  こうして二人の間で中秋節の行事が二つ増えた。

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