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「ところで、成都の話はどうなったって?」
「ああそれ。流通の都合上、内陸部はやっぱ難しい。採算取れないからやめるって」
「そうか。まあ無理しなくても時期を見て、また次のチャンスでも」
「ぞぞむもそう言ってた。まずは利益出さないとって」
「おおすげえ。ぞぞむがそんな現実的な発言するなんて」
孝弘が笑い出し、レオンもうんうんとうなずく。
「さすがに最近、色々考えてるみたいだよ。ある程度、民芸品熱が落ち着いたのかも」
「ああ。あれだけ工場作って、ちょっとは満足したんじゃね?」
ぞぞむが手がけて作った櫻花公司の直営工場は、規模は小さいながらも雲南省や新彊などを含めて七カ所になる。そのほかにも提携工場があるし個人契約している職人もいる。
「よく頑張ったよねー。最初に直営工場作るって聞いた時は正直、無理でしょって思ったけど」
「ぞぞむの情熱勝ちだよな。職人の子たちは田舎から出てきて真面目に仕事してくれるし」
「問題は都市部のほうだよね。カフェスタッフの管理は難しいね」
「店長たち、大変だって?」
「まあね。予想してたけど」
「スタッフはちゃんと仕事しない?」
「店長がいる間はいいんだけど、いなくなるとかなり適当だよね。勝手に豆とか備品を持って帰らないようにきつく指導してるし、鍵付きのロッカーに入れて、朝、必要な分を出しておくけど、売上げが合わないことも多いって」
「やっぱそうだよな。各店の店長代理はどんな感じなんだ?」
「んー、一応店長推薦の人間を採用してるんだけどねー」
それでもトラブルは絶えない。
「店が増えると金銭や在庫の管理がもっと難しくなるかもな」
孝弘が眉を寄せて言い、レオンはうーんと首を傾げた。
「今回見てきた限り、在庫管理はかなりできてる。北京と上海は留学時代から知ってる奴を店長にしてるってのもあるけど」
「やっぱ信頼できるスタッフを育てるのが一番大変だよな」
「そうなんだよね。ずっと店長が店にいるわけにはいかないし、代理だけの日もあるでしょ」
「そうだよな。まあ仕事に対する感覚が違うしな」
祐樹は口を挟まずに聞いていたが、二人の話はよく理解できた。祐樹も中国人スタッフの教育やマネジメントでかなり苦労している。
都会ではそうでもなくなってきたが、職場の物を自由に使っていいという感覚はまだけっこう残っていて、私用で勝手に職場の設備を使ったり、備品を持ち帰ることが多々あるのだ。
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