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「こんなふうになるならもっと飲ませりゃよかった」
「何言ってんの」
「もっとしたいってこと」
孝弘の手が背中を撫でて、祐樹を誘惑する。
「眠いんじゃなかったの?」
「だから眠気は飛んだって。煽られてまだ興奮してる」
まだ向かい合った孝弘の上に乗ったままだ。
「重くない?」
「少しな。なあ、もっかいしよう。今度は俺の好きにやらして」
そう言いながら、祐樹を押し倒してくる。一旦体を離して、押し倒されるまま大人しくシーツに背中をつけると、孝弘が身を寄せて鎖骨に口づけた。
「いいよ、何回でも。おれもまだ足りない」
平日だけど、孝弘の誕生日なんだしいいやとうなずいた。
「うん。明日は祐樹が起こしてな」
にやりと楽しげに笑った孝弘がちゅっと胸の先に口づけて、祐樹は「ん」と喉をそらした。
結局、プレゼントを渡せたのは翌朝になった。
約束通り、祐樹がそっと肩を揺すって起こしたら、孝弘は大きくあくびして、目を開けて幸せそうに笑った。無防備な笑顔にとくんと心臓が跳ねる。
もう何度もこうして一緒に寝て、起こされたり起こしたりしているのに、やっぱりドキドキする。大好きだと思う。
シャワーを浴びて、祐樹が作った卵とじうどんの朝食を食べたあと、封筒を渡した。
「誕生日おめでとう。遅くなったけど、これプレゼント」
どんな顔をするだろう。内心のドキドキを隠して、何食わぬ顔で孝弘が淹れたコーヒーを一口飲む。表情を読まれないようちょっとうつむいて、こっそり孝弘を窺った。
「ありがとう」
受け取った孝弘は「開けていい?」と薄い封筒を開いた。
中には出張で見慣れたCITS(中国国際旅行社)のロゴが入ったチケットホルダー。そこに挟まれた成田行きのチケットを見て、ちょっと困惑顔で首を傾げた。エアチケットは祐樹と孝弘の二人分だ。
「日本に行くの?」
言いながら日付を確認して「ああ、春節休暇」と納得したようだ。
「うん。この前、兄からメールが来てたんだ」
「え、実家で何かあった?」
「ううん何も。実家が古くて全面リフォームするから部屋にあるもん、どうする?って感じのメールだった」
適当に箱に詰めて置いておくが、近々帰国予定があるなら知らせろと達樹が連絡して来たのだ。祐樹の中国赴任が長いから新年の元旦が正月ではないことくらいは覚えていて、春節に帰国するのかを訊ねる内容だった。
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2022.12.7
ゆまは なお
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