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#1 ふたりの関係
――今日もあの人が家に来た。
チャイムの音が鳴って玄関のドアを開けたら直ぐにキスをしてきた。彼の舌が口の中に入って舌を絡ませて玄関の前でHなキスをした。
正直悪くない。黒澤さんは自分よりも大人だ。彼からは色々なイケない遊びを教えて貰った。
この無口な男、案外むっつりスケベだって事は僕だけが知ってることだ。何故かそれが嬉しい。黒澤さんの別の顔を僕だけが知ってる事に、彼に『特別な気持ち』を感じる。
そのあと抱きあってお決まりのベッドコースで獣みたいに肉体を貪った。果てた後、また求めてくる彼の性欲はまるで野獣だ。何回戦目かで予備のゴムが全部無くなった。こうしてベッドの脇の下にあるゴミ箱の中には使用済みのゴムの数と、ティッシュの山が出来た。
最後のフィニッシュで肌を重なると黒澤さんは僕の上でグッタリしていた。彼の息づかいを耳元で感じた。それだけで胸が何故かドキドキした。両手を彼の背中に回してギュッと抱きしめた。
「黒澤さん…――」
「すまん、余裕がなかった……」
彼の名前を呟くと、黒澤さんは一言そう言って僕の腕を払ってベッドから起き上がるなり背中を向けて、タバコを一本口に咥えると無口で吸いはじめた。
「――あの、今日は泊まって行きますか?」
「……弓弦 が良いなら」
「ほ、本当に……!?」
一瞬、おもわず喜ぶと彼の前で口にした。黒澤さんはこっちを振り向いてジッと見てきた。その視線に我に返ると、慌てて視線を反らして誤魔化した。
「べっ、別に喜んでるわけじゃないですから――!」
「そうなのか?」
「ええ、そうですよ! それにこんな時間に最終電車なんかありませんから、ついでにってお誘いです……! 勘違いしないでくださいね…――!?」
慌てて態度を変えると黒澤さんはいきなりケラケラ笑った。そして、タバコを灰皿に押しつけて消すとキスしてきた。
「客思いの良い子だな弓弦。じゃ、今日は朝まで泊まって行くか――」
「おっ、お金……! ちゃんと追加料金は取りますからね…――!?」
「いいとも。じゃあ、最後にもう一度」
「ンッ……」
彼のタバコの匂いを感じながら目を瞑ると、頭が溶けるような濃厚なキスをした――。
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