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#1 ふたりの関係
――朝方、玄関が閉まる音でパッと目を覚ました。枕元にはお金が入った白い封筒が置かれていた。中に10万円が入ってあった。ベッドから起き上がると封筒を開けて中を確認した。そして、部屋を見渡すと彼の姿がなかった。
黒澤さん帰ったのか。まあ、社会人だし今日は土日でもないから平日は仕事か……。
それにしても黙って帰るなら最後に話したかったな。いや、せめて見送りたかった。次会えるのはいつだかわからないし……。
彼が居なくなったシーツは既に温もりが消えて冷たかった。ただ微かに彼の匂いとタバコの匂いが部屋の中に残っていた。
黒澤は俺とヤったあと、部屋にそのまま留まる事もなく早く帰って行く。
『大人は忙しい』のかな、なんて……。
子供の俺には想像出来ない。
俺だったら好きな人とイチャイチャして、ゆっくり過ごしたい。でも、そんなワガママ彼には言えない。黒澤さんとはただの身体だけの関係で、俺は自分の体を売って生計を立てて いる。そして、黒澤さんは俺のお気に入りのお客様だ。お互いに分かりきって今の関係 を続けているのに彼に特別な感情を持つなんてそんなのは自分の都合のいい話だ。それなのにどうも最近おかしい――。
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