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#1 ふたりの関係 

――彼と出会ったのは数ヶ月前。生活費と小遣い稼ぎで始めたゲイサイトで彼と出会った。その時は、売りをはじめてまだ間もない時期だった。  とにかくお金が欲しかった俺は、彼とメールでやり取りしてその次の日、喫茶店で彼とはじめて会った。黒澤はスーツがビシッと決まってて、なんだか大人の男の色気があった。それに比べたら未成年で学生の俺はまるで『子供』だ。ちょっと背伸びしただけでも、全然彼とは似合わない。  むしろ目立つくらいだった。はじめは彼とは1回だけの関係で終わらそうと思った。単純に関係が長引くと後でめんどくさくなる気がしたので後腐れ無しの関係で居ようとした。だけど実際、彼と寝たらおもった以上に良かったのは確かだった。それに、お金の羽振りも良かった。1回で20万円もくれた。  売りをはじめて、こんなに気前が良いのは黒澤さんが初めてだった。そして、1回で終わる関係が2回、3回と徐々に回数が増えて行き。彼は俺の事が気に入ったのか、2人でよく会うようになった。そして、今では彼の専属の関係(パートナー)へ発展した。 毎回、回数を重ねる事に彼に会うのは苦手だとか苦痛でもなかった。むしろ会うのが『楽しみ』と感じていた。  デートや食事やSEXもどれも楽しかった。黒澤さんは大人だから色々リードしてくれるし、知らないことも沢山教えてくれる。何故かそれが心地よかった。俺には他の客もいたが、固定で専属のお客は彼だけだった。段々と距離を縮めて行く程しまいには外でSEXするだけじゃなく。自分の家に彼を上がらせてSEXまでするようになった――。 今までこんな事は一度もなかったのに。俺の中で彼の存在が日に日に強まってきた。今では彼からの電話が鳴るのが待ちどおしいくらいだった。 彼は俺に『愛してる』とかは一度も言ったことがない。俺も彼に面と向かって『愛してる』なんて言葉は一度も言ってない。 ただ『身体だけの関係』が続く中で、黒澤の俺に対しての本心を聞いた試しがない。本当は聞いてみたいのは本音だけど、彼がどう答えるかを想像するだけでもマイナスしか想像できない。俺は、彼に買われてる身だし、余計な事を言って、この続いてる関係が壊れるのが怖い。そう思うとなかなか聞き出せないでいた。

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