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#1 ふたりの関係
柄でもなく、彼の事を考えていた。割りきった関係で俺達は付き合ってるのに、何故かそれが時たま虚しくなる。
「――っかだな。こんなこと今更わかってるのに、黒澤さんが僕なんか本気で相手するわけないのに……」
昨晩、2人で獣みたいに求めて抱きあったベッドから出ると床に落ちていた白いYシャツを着た。そして、机の上に置いてあった黒い眼鏡をかけると不意に紙袋に目を向けた。袋を開をけると中には彼の黒い下着が入っていた。ずっと前、うちに彼が来た時に家の中に脱ぎ捨ててそのまま置いて行った下着だった。
俺はそれを見つけて彼にメールで伝えた。はじめは『つぎ会ったら持って帰る』と言っていたのに、次に会った時に下着が入ってる紙袋を持って帰らずに忘れて帰った。
それが何故か、毎回の如く続いてる。俺も半分は諦めてる。捨てれば簡単な事なのに。それなのに何故かそれを捨てられずにいた。
「また持って帰ってないなあの人、はぁ…疲れる」
次会ったら必ず渡してやろうと思ってるのに、何故か胸がギュッと切なくなる。こんな気持ち今まで感じた事なんか無かったのに、ますます頭がおかしくなってきてる。このあやふやな関係を終わらせたい気持ちとは裏腹に、気持ちは逆の方向に突き進んでいる。まるで、動き出した乗り物のブレーキが利かずに、そのままスピードを上げて加速していくようだった――。
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