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序章

 ―人は誰しも、一度は誰かに恋して、恋愛して、そこでフラレて、また誰かに恋してと、色々と、経験を積んで恋愛していくものだと思っていた。 まさに俺もそんな感じで誰かに恋して、恋愛していくものだと思っていた。そこにどれだけ相手に『本気』になれるかが肝心だけど。生憎、俺の人生で『本気の恋愛』をした事がなかった。  いいや、単に相手に『本気になれなかった』が正しいな。高校の時も、大学の時も、それで本気になれなかった。いや、自分自身の中で本気の恋愛をする事が出来なかった。それについて今はまだ話せない。だけど、これだけは言える。俺は彼と出逢った事で本気の恋愛をするのも悪くないなと思った。そう、俺の目の前で顰めっ面(しかめっら)して眼鏡をかけて、気難しい表情で俺の事を見てくる彼に俺はまんまと恋してしまった。  この物語りは、そんな彼に俺が恋に落ちてしてしまった時の話しだ――。

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