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撮影会(2)

それから僕らは、ショウヤの親父の店が経営してる撮影スタジオへ移動した。 カイんちのリハスペースといい なんて都合のいいメンバーが揃ってることか… もちろん道中で、しこたま酒を買い込んだ。 線路脇の住宅街の一角にあるそのスタジオは… 外見、ただの誰も住んでいない廃墟に見えた。 鍵を開けて中に入ると… まさに『廃墟』的な空間が広がっていた。 今流行りの、アニメのコスプレイヤーなんかが、撮影に使うらしい。 荷物を置いて… それぞれが買った酒缶を取り出し… とりあえず酒盛りが始まった。 ハルトはゴロゴロ転がしてきた大きなカートを開け、 中から色々取り出した。 「やっぱ黒より白がいいかな…カオルの衣装…」 そう言いながら彼は、 取り出した白い衣装をバンガーに掛けた。 「おおー可愛いな、似合いそう…」 「…」 それは…白いメッシュの、透け透けに、 なんか緩んだ包帯みたいのが絡まってる感じで… ランダムに、銀色のピンや飾りが付いていた。 丈が長いので…ワンピース風にも見えた。 飲みながら… 彼らはサクサク準備を始めた。 「カオル、メイクしたことある?」 「まあ、一応は…」 「じゃあ、下地は自分で、コレ塗っといてね」 ハルトは、そう言って僕にファンデを渡し… 他のメンバーとも色々と打合せを始めた。 僕は、たまに缶のハイボールを飲みながら… 鏡の前で、自分の顔にファンデを塗っていった。 すごい厚いなーこれ… ファンデって言うより、ドーランって感じだ。 すぐに塗り終わってしまったので、 僕は煙草に火をつけた。 「ふうーー」 カシャッ。 また撮られた。 「絵になりますねーカオルさん…」 無口なショウヤが、しみじみ言った。 「そうかなー」 「もっと撮ってもいいですか?」 「めっちゃ中途半端な顔だけど、いいんですか?」 「いいです。自分コレクションにします」 そう言いながら彼は、 いろんな角度から、カシャカシャ僕を撮りまくった。 なんか恥ずかしいぞ… とか思ってたら、ハルトが戻ってきた。 「カオル、お待たせ。下地はちゃんと塗れた?」 「あ、はい」 「じゃあ、目とか、描くね」 ハルトは、腰を据えて… 僕の顔をじっと見た。 そして、アイライナーを取り出した。 「目、瞑っててね…」 そう言いながら…彼は、 僕の瞼にライナーを乗せていった。 カシャッ。 うーまた撮ってんのかー 両瞼を塗り終わったところで、ハルトは言った。 「乾くまで、しばらく目瞑っててねー」 「…はい」 「何があっても、開けちゃダメよー」 「…はい?」 …と、急にくちびるに、生暖かいモノがかぶさった。 「…ん…?」 僕はうっかり目を開きそうになった。 「あーーっ」 サエゾウの声が遠くに聞こえてた。 「ハルト…なにドサクサに紛れてチューしてんだよ」 あ、この感触… ハルトさんのくちびるでしたか… カシャッ。 やっぱりしっかり撮られた… その感触が離れ…すぐ近くでハルトの声がした。 「だって〜可愛いんだもん…」 「あの、まだ瞑ってないとダメですか?」 「うーん…もう少しかな」 と、またも、生暖かいものに、くちびるを塞がれた。 「…んんっ…」 今度は誰だ?サエゾウさんか? …そう言えば、カシャってしないな… まさか… 「あーーっ」 またサエゾウの声だ。 「ショウヤまで〜」 あーやっぱり… って、ショウヤさん、 無口でおとなしい人だと思ってたのに… こーいう事はちゃんとするんですね… 「…撮影前だから、チューで我慢ですね…」 それって…どういう意味なのでしょうか… 「うん…もう乾いたから目開けていいよ」 ふうー って、目を開けてみれば、何事もなかったかのような景色だった… 「やっぱ、コレかぶろうかなー」 ハルトがシルバーのウィッグを取り出した。 「とりあえず先に、着替えてみてくれる?」 「…分かりました」 僕は、シャツのボタンに手をかけた。 「あ、待って…」 ハルトがその手を止めた。 「やってあげる…」 そう言って彼は、僕のボタンを外そうとした。 「あ、待ってください…」 今度はショウヤが言った。 そして彼は辺りを見回し… 「シルクさん、お願いします」 と、既に着替えを終えたシルクを指名した。 「なんでー?」 ハルトが悔しそうに言った。 「だって、どうせなら良い画を撮りたいですから」 しれっとショウヤは言った。 「しょうがないなー」 と、ニヤニヤしながらシルクが近付いてきた。 彼の衣装は黒だった。 とてもカッコよかった。 シルクは僕の目の前に立ち… ゆっくり僕のシャツのボタンを、外した… カシャカシャッ… 連写のシャッター音が響いた。 とてもカッコいいシルクに、 シャツのボタンをはずされている… しかもそれを写真に撮られてる… 僕はうっかりそれだけで… 何とも妙な気持ちに、なってきてしまった… 「はい。全部外した…」 「脱がせてもらっていいですかー?」 カメラを構えたショウヤが、更に注文をつけた。 シルクはゆっくり、僕のシャツを両側に開き… 首から、肩から…両腕へと、ずり下ろしていった。 カシャッ…カシャカシャッ… その間にも、 連写のシャッターが鳴り続けていた… ああもう、お願いそれやめて… いつの間に僕は… そのシャッター音にまでも、 愛撫されているように感じてきてしまった…

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