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打上げ本番!(1)
ファンの皆さまを見送り…
イベントも終了した。
ようやく楽屋に置きっ放しだった機材も片付け…
僕らは、ライブハウスのスタッフさん達に、最後の挨拶にいった。
「すげーよかったよ!シキくんにはちょっと悪いけど、カオルくんメッチャ良いね」
「…あ、ありがとうございます…」
「でしょー」
サエゾウが、鼻高々に言ってのけた。
「うん、マジで良かった。次回も、また是非出て欲しいんだけど…」
「あーこちらこそ、是非お願いしますー」
カイが、スタッフさんと次回の打合わせをした。
即、ここでの次のLIVEの日程が決まった。
黙っていてもお客さんが来てくれるっていうのはホントにありがないな…
ま、それはそれで、
さっきみたいな営業が付いて回るのだが…
それにしたって、持ち出しが無くて済む…
いやむしろ、バック…要はギャラ的なものが発生するLIVEなんて、僕は初めてだった。
そして僕らは、外へ出た。
「どーするかねー」
「今日の映像…観たいよね」
「悪いけど、ウチの店は通常営業中だから無理だ」
カイが言った。
「じゃあ…」
カイ、サエゾウ、ハルト、ショウヤの4人は…
揃ってシルクの方を見た。
「…」
「しょーがないな…ウチに来ますか」
「やったー」
そーいった流れで、
僕らはまた、しこたま酒を買い込んで…
今度はシルクの家に行った…
「…」
とある雑居ビルの一部屋であるシルクの住まいは、
彼が自分でやっている工房の事務所も兼ねていた。
ガラーンとして、生活感のない空間に、
大きな画面のPCがあって…
しかも小型だけど、スピーカーも繋がっていて
なるほど、上映会には持ってこいな場所だった。
ちなみに…今更、居住地関係を解説すると…
駅を挟んで、北口に
今日やったライブハウス
先日撮影会やったスタジオ
もう少し隣の駅寄りにハルトの住まい
南口に
ここ、シルクの事務所兼住まい
カイの店(住まいはチャリで15分)
ショウヤの写真館兼住まい
こっちのもう少し隣の駅寄りにサエゾウの住まい
っていう…
電車を使わずに活動できてしまうメンバーなのだ。
だから、酒盛りなんかも…
終電など一切気にすることなく行えるわけなのだ。
ちなみに僕の住まいも南口で
いちばん近いのが、ショウヤの家かな…
さて、そういったわけで…
シルクの事務所で…
上映会兼打上げ的な酒盛りが、始まった。
「乾ぱーい!」
「お疲れー」
「にゃー」
LIVE前から散々呑んでるような気がするが…
やっぱり終わった後の乾杯は、格別だった。
「いやーでも、良かったんじゃない?」
「とりあえず俺は楽しかった」
「ちゃんと勃たせたしねー」
「…あんなんで、大丈夫だったんですかね…」
僕はやっぱり。若干、自信無さげに言った。
「みんな圧倒されてたよー」
客席で見ていたハルトが言った。
「良い写真いっぱい撮れました」
興奮気味にショウヤも言った。
…あなたからは公平な意見が聞ける気がしない…
「お客さんたちの評判も良かったじゃん」
「うん、今のところダメ出しは1つも聞いてない」
「むしろ、俺間違えたのバレてたー」
「とりあえず、観ますか…」
そう言ってシルクがPCを操作した。
画面に映像が流れて始めた。
スピーカーから、始まる前のBGMも流れ始めた。
あのときの…
あのドキドキ感が僕の中に蘇ってきた…
そして、幕が開き…
ドコドコのカイのドラムから、演奏が始まった。
カイが僕の背中のスイッチを押した瞬間だ。
「おおーホントに目の色変わったわ…」
「魂抜けた…」
「いっちゃった…」
また好き放題言って…
本番あるあるで、多少の音程のフラット感にああーってなる場面も何度もあったが…
全体的には、世界観をぶち壊すほどの失態はなかったように、自分でも思えた。
「…はあ…」
僕は、安堵の溜息をついた。
そして、例の最後の曲になった。
「これ…マジでよかったです…」
ショウヤが呟くように言った。
「うん…ホントに気持ち良さそうだった…」
ハルトも続けた。
カメラが切り替わって…僕のアップ映像が流れた。
「あーホントだ…ヤバい顔してる…」
サエゾウが言った。
「ま、後ろから見ててもエラいヤバかったからねー」
カイも言った。
それはもう、ホントに…
自分で見ても、気持ち良く犯されてる人の顔だった…
「…」
こんなだったのか…
こーれはちょっと恥ずかしいぞ…
「完全に、挿れられてるときの顔だよなー」
シルクがトドメを刺すように言った。
「うんうんうん…」
全員同調した。
そして、歌い終わって情けなく膝をつき…
幕が閉まり切る直前に、バタっといく所まで、
しっかり映ってしまっていた…
「ああー…」
僕は頭を抱えた。
「あははは…いや、いーじゃん、すげーいいよ」
僕の様子を見たカイが、励ますように言った。
「うん、インパクト絶大よー」
「天然でこれだけできるってスゴいわ」
「お客さんたちもザワザワしてましたよね」
「してたしてた…心配してた」
「もっかい流す?」
「うん」
シルクがPCに向かった。
僕は頭を押さえながら、
ゴクゴクとハイボール缶を飲んだ。
と、カイが言い出した。
「ちなみにあのあと、どうやって処理したの?」
「あー俺もそれメッチャ気になるー」
サエゾウも叫んだ。
「…はい」
ショウヤが、ちょっと恥ずかしそうに…手を挙げた。
「美味しく頂きました…」
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