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2度めのLIVE(1)

無事、形になった新曲も引っ提げての… 僕が入って2度めのLIVEの日がきた。 今日の会場は、隣駅のライブハウスだった。 その日ショウヤは、 例の撮影会で撮り溜めた写真をまとめた、 自主制作の小冊子を作って持ってきた。 「今日はこれ売ります」 彼は静かにテンションを上げていた。 僕らも見せてもらった。 おおおおー 誰ですか、この人たち… ただでさえ、割とカッコいい写真を、 ショウヤがまた、上手に加工を加えて… 何とも素晴らしい作品に仕上がっていた。 自分が写ってるのをそんな風に言うのもなんだけど… 「いいねーこれ」 「やっぱショウヤってセンス良いよな」 「俺かっけー」 4人のショットからの、サエシル… そして、ソロのページが続いての… 最後が自分の番のソロのページになっていた。 うわー これヤバくないですか…? ちゃんとソロ撮影で撮った写真より… ランダムコーナーで、撮られちゃった写真の方が、 どう見ても多い気がするんですけど… 目隠しで首輪しちゃってるやつとか… と、次のページを捲ると… ドーンと… 黒いカオルさんのドアップの写真が出てきたっ… 「あーこれ、絶対自分用じゃん」 「これ見て抜いてください的な?」 「だって、めっちゃショウヤ目線だもんね」 絶句… 「他のイベントでも、いっぱい売れましたよー」 え、もう世の中に出回ってるのかコレ… 一応写真家なショウヤは、 写真家仲間と一緒に、展示会やイベントなどの活動もしているらしい。 彼はいそいそと、物販コーナーにそれを並べた。 今日の出演は3バンド。 僕らは2番めだったので、リハの後も外には出ず、 例の、控え室の隅っこで、少しずつ準備を始めた。 僕はいったん飲み物を買いに、外に出た。 と、ドリンクコーナーに、 こないだのLIVEのときも早くに来ていた女子がいた。 「あっ…こんにちは…」 「ああーカオルさんだー」 「わわっ…素ですねっ…」 ヤバっ… うっかり、こんにちはなんて言っちゃった… 「えっと…今日も来てくださって、ホントにありがとうございます…」 うーん…なんか素人っぽくなっちゃうなー 「あ、これ買いましたー」 「私もですっ」 彼女たちは、既にショウヤの力作を手にしていた。 「ああああ…ありがとうございます〜」 僕は赤面してしまった。 余計に素人臭さ丸出しになってしまった… 「素のカオルさん、可愛いです」 「ですよねっ…」 「別人格も、超楽しみにしてますー」 「…ありがとう…ございます…」 僕は彼女たちに頭を下げて、 ドリンクカウンターに向かった。 「ハイボールください」 「…マジでフツー」 「あの転生ぶり…エモいよね…」 背後から、彼女たちの小さい声が聞こえた。 ああ…営業って難しい。 ってか僕、 ありがとうございます…しか言えてないじゃん と、また2人組のお客さんが入ってきた。 やっぱりこないだの…若い2人組だった。 「あーーっ…カオルさん…ですよね?」 そのうちの1人が、僕を見つけて叫んだ。 「あ…は、はい」 「うわー、ノーメイクのカオルさんだ…」 「すげーレアだー」 2人もとても嬉しそうだった。 「あ…今日も、ありがとうございます…」 やっぱ、ありがとうございますしか言えなかった。 「楽しみにしてます! あ、写真集も売ってんですよね、買います!」 「あ…ありがとう…」 僕は、その2人にもペコっとお辞儀をして やや逃げるように、控え室へと戻った。 ふうー 「おかえりカオル…お客さんいた?」 カイが訊いてきた。 「あ、はい…こないだの女の子たちと、あの若い男子2人組が来てました」 「ちゃんと挨拶した?」 「あーはい…一応は…」 「どーせ、子どもの発表会みたいな挨拶だろー」 サエゾウが言い捨てた。 はい…仰る通りです… そしてハルトは、また僕を隅っこの椅子に座らせて、 顔を描き始めた。 「今日は黒で行ってみようね…」 「…」 「写真集も出たことだし」 「……」 開演時間になって、最初のバンドのメンバーが、 みんなステージに移動していった。 「ねーハルト」 カイが言った。 「今回さ、もしかしたら、カオルだけじゃ済まないかもしれないんだよね…」 「何それー」 ハルトは答えた。 「いざとなったら、お前とショウヤで間を持たしといてくれないかな…」 ハルトはちょっと考えてから、言った。 「写真集持たせてショウヤを立たせておくか…」 え、こないだボロクソ言われてた気がするけど… 「それでお願いするわ」 「そーだね、あいつにカオルを語らせたらいい」 「大丈夫なんですか?ショウヤさん…」 僕は心配になった。 「普段は全くダメだけど、語りのスイッチ入ると すげー喋るから、あいつ…」 それって、ホントに… ただのメンドクサい人じゃないですか 「まーなるべく、すぐに出るよう努力はする…」 「…わかったー」 ハルトは僕の顔を描き続けながら… そう言いながら、溜息をついた。 「今日は絶対、処理係と思ってたのに…」 あー なんかみんな… ごめんなさいハルトさんな空気になっちゃった。

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