85 / 398

3度めのLIVE(1)

そしてまたLIVEだった。 よくまあ、コンスタントに、 こんなにLIVEができるもんだよなー しかも毎回、 そこそこお客さんが来るってのがスゴい。 僕は本当に… このバンドに参加できることを嬉しく思っていた。 いやまあ、他にも色々と… 良いことも面倒なこともあるけどね。 特に、恙無くリハも終えた僕らの所に、 とある人物が近付いてきた。 「お疲れー今日はよろしくね」 「あ、こちらこそー、今日は呼んで頂いてありがとうございました」 カイが立ち上がって、その人物と握手をした。 「あーアヤメさん〜会いたかったー」 サエゾウは、馴れ馴れしく、その人物に抱き付いた。 「サエ、俺も会いたかった…」 「…」 「今日の主催のアヤメさん…」 呆然とする僕に、シルクが教えてくれた。 「今日はよろしくお願いします」 シルクも彼に向かって会釈をした。 「最近ボーカル変わってから、評判いいじゃん」 「あーこれが、それー」 サエゾウが、僕の首根っこを捕まえて、 その、アヤメさんて人の前に、突き出した。 「…あーあの…初めまして…」 「へえー君が噂の、カオルくん?」 「…はい…」 え、どんな噂になってるんですか… 「何か、凄いんだってねー」 「…そんなじゃないと…思います…」 「だいぶ、普通の子に見えるけど…」 「はい、だいぶ普通だと思います…」 「ふっ…あはははっ…」 「…」 アヤメさんて人は、大笑いしながら、 僕の頭を撫でて、言った。 「とにかく楽しみにしてっから、今日はよろしくね」 「あ、はい…こちらこそ、よろしくお願いします…」 そして、彼は… 他のバンドの方へ行ってしまった。 「すごく、カッコいい人ですねー」 「トリのバンド…KYのギターの人だよー」 「バンドも超カッコいいから、観た方がいいよ」 「…」 今日は、そのアヤメって人が主催する、 5バンドが出演するイベントだった。 僕らの出番は、真ん中の3番めだった。 少し時間に余裕があったので、 僕らはまた、近所のファミレスに行って… ハイボールで乾杯した。 「乾杯ー」 「にゃー」 「今日も頑張ろうねー」 そのうち、いつものように、 ハルトとショウヤも合流した。 「今日はKYさんも出るんですよね…」 「ねーちょっと楽しみだわ」 そんなに有名なのかー 面白いバンド名だけどな… 「どんな感じのバンドなんですか?」 「そうだなー…言ったらメンバー全員が、お前みたいな感じかな…」 何だそれ… そしてカイが、ちょっと真面目な顔で、切り出した。 「今日は楽屋は使えない…あ、いや終了後の話ね」 処理対策の話ですねー 「各自で何とかするしかない…」 「…」 皆さん顔を見合わせてしまった。 「わかった…なるべく耐える方向だな…」 サエゾウは、僕を見て真面目な顔で言った。 「カオルー、こないだみたいな事しないでよ!」 「…すいません…」 「カオルがなー」 「自分で何とかなんて、出来んの?」 「…」 そればっかりは… 終わってみないことには、分かりません… 「まーハケるのは、2人に頼むとしてー」 またいつ、そういう状況になるかも分からないし… 自分で何とか…出来るようにしておかないと、 この先やっていけないよなー そう思って僕は、言った。 「なるべく…自分で頑張ってみます…」 「そうだなーそれも修行だな」 「カオルが変なことしなければ、俺は平気だと思う」 「俺も…たぶん打上げまで我慢できる…」 3人様は、そんな事を言ってるが… 果たしてどうなることやら… 「そろそろ戻るか」 「そうだね、もう開演してる時間だし…」 そして僕らは店に戻り… 最初のバンドが終わるのを待つ事にした。 また、いつもの女の子達が来ていた。 「わーいつもありがとうねー」 サエゾウが、彼女達の所に駆け寄った。 「わわっ…サエ様ー」 「やったー皆さまお揃いですねー」 カイとシルクも後に続いた。 なるほど、彼女たちは、 始まる前のメンバーと触れ合うのを目当てに いつも早めに来てるのかもしれないな… 「あ、カオルさんも…まだ素ですねー」 「ほら、カオル、ちゃんと挨拶しろよ」 ボーっと立ち尽くす僕を、サエゾウが小突いた。 「あ…いつもホントにありがとうございます…」 「あーまた…小学生か、お前ー」 「あはははっ…」 「可愛いー」 しばらく彼女たちと話しているうちに、 1バンド目の演奏が、終わってしまった。 「じゃあ、ごゆっくりね…」 「はい、頑張ってください」 そして僕らは、楽屋に向かった。 「急いで準備しなきゃね」 ハルトが、バタバタと… 衣装やら何やらを準備していた。 「…また、このタイプですか…」 ハルトが僕の用意した衣装は、 だいぶラフな感じの… アシメトリーなデザインのワンピースだった。 「可愛いいでしょ?」 「…」 「だって、ピッタリだったら色々ヤバいでしょーしょうがないじゃん」 …スイマセン、そうでした。 ハルトは、着替え終えた僕の顔に、 いつも以上にテキパキとメイクを施し… 髪もいい感じにセットしてくれた。 「はい、完成ー」 「ありがとうございました…」 自分で言うのもなんだけど…カッコいいー やっぱハルトさんて、すごいなー 「ハルト悪い、ちょっとこれ着るの手伝ってー」 「はいはい…」 「ハルトーつけまつげが上手くつけらんない」 「んーちょっと待ってて」 「ハルトー後でいいから、俺の髪結んでくれる?」 「わかったー」 ハルトさん、すごい… トキドルって… ハルトさん無しにはあり得ないバンドなんだな…

ともだちにシェアしよう!