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それぞれの時間(3)

ショウヤのおかわりレモン割りを作りながら… ふと、僕は… さっきのシルクの言葉を思い出した。 「どうぞー」 「ありがとうございます」 今頃、シルクは… サエさんとヤってるのかな… 「…」 僕は思わず、ハイボール缶をグビグビ飲んだ。 「…よく飲みますね…大丈夫ですか?」 「いや、ショウヤさんに言われたくないです」 「あははっ…すいません、そうでした」 ショウヤはまた、申し訳なさそうに続けた。 「僕のせいで、飲み足りないうちに帰らなきゃならなかったんですもんねー」 「…あ、いや…まあ…」 「もしかして、まだ飲んでたり…するのかな」 「…いや、お開きになったみたいですよ」 僕は、少しだけ… 寂しそうな表情で言った。 「さっき、シルクが…カギ届けてくれましたから…」 「あ、そうなんですね…」 「…サエさんが…泊まってるみたいです…」 僕は、何でもない感じで 笑いながら、ショウヤにそう言った。 「…そうなんですか…」 「どうせ、ヤってるんだと思います…」 僕はサエゾウ風に…冗談めいて言った。 「今日はショウヤさんに可愛いがってもらえって…シルクに言われましたから」 「…」 どうせヤってるんだから… 僕だって、ショウヤとヤりたい… 僕は、そう思ってしまっていた。 そこに何か深い意味が、果たしてあるのか… その時の僕に自覚は無かったが… ショウヤは…少し考えて… 飲みながら、続けた。 「…僕は、カオルさんの気持ちを…知ってます」 「えっ?」 「ていうか…皆さんの気持ち…分かっちゃうんです」 そうだった… 真実を見抜くカメラマンだった… 僕は…言ってみた。 「…じゃあ…僕がショウヤさんを好きな事も、知ってるんですよね…」 言いながら… ショウヤの手に、そっと触れた。 あーなんか…小っ恥ずかしい… 我ながら、見えすいたズルい言い方だなー 少々酔いの回った頭で…僕は思った。 「…知ってます…」 ところがショウヤは、 顔色ひとつ変えずに、そう切り返すと… その僕の手を、むしろ逆に力強く握り返した。 そんな彼に…僕は、続けた。 「…ショウヤさんには、何も逆らえません…」 「…どうして?」 「だって…ショウヤさん…僕の恥ずかしい写真、いっぱい持ってるじゃないですか…」 「…」 「それこそ…シキさんなんかよりずっと…」 僕の…若干見えすいた台詞を、 黙って聞いていたショウヤの目が… 何だか猫のように、大きく丸く… 瞳孔が大きくなっていくように見えた。 そしてその大きな瞳で、ニヤっと笑ったショウヤは… いつになく強い口調で言った。 「…そんな事は微塵も思ってないくせに…」 「…!?」 ちょっとビックリしている僕に… ショウヤは顔を近付けて、囁いた。 「…ズルいカオルさん、魅力的ですけどね…」 「…」 ああ…この人も… 実は全部見透かしているんだな… 僕は、改めてそう思った。 こんな言い方、するんじゃなかった… 僕は…ちょっとシュンとして、 黙って下を向いてしまった。 …と、ショウヤが、握った僕の手を 勢いよく自分の方に引いた。 「…!」 そして瞬く間に僕は… 彼にくちびるを塞がれた。 「…んっ」 しかも、ショウヤは… いつになく激しく、僕の口の中に舌を入れてきた。 「…んんっ…ん…」 僕は、その感触に…ビクビクと震えた。 そっと口を離れたショウヤに… 僕は、若干ボーッとした表情で、言った。 「こんな…激しいショウヤさん…初めてだ…」 …と、ショウヤは… 更に悪い顔になって、言った。 「…だって…可愛がって欲しいんですよね?」 そう言うと、悪いショウヤは… グラスのレモン割りを、勢いよく飲み干した。 そして僕の腕を掴んで立ち上がり… 僕を布団に連れていったかと思うと、 そのまま僕を押し倒した。 「…っ」  誰だ…これ? さっきまであんなに… フラフラでダメダメだったくせに… 何か変なスイッチ踏んじゃったかのかな… 僕を見下ろす人物は… 僕の知らないショウヤだった。 「…遠慮なく…可愛がらせてもらいます」 「…」 威圧されて、若干ビビり気味の僕に… そう言い切った彼は、再び激しく口付けてきた。 「…んんっ…」 僕はビクビクと震えながら… 胸の辺りが、キュンと締め付けられるのを感じた。 そっと口を離れたショウヤは… またニヤっとしながら囁いた。 「ズルいカオルさん…スゴく僕とヤりたそうだった」 「…っ」 「カメラ越しじゃなくても…分かっちゃった」 「…」 すっかりキャラが変貌したショウヤは… 僕のシャツを捲り上げたかと思うと、 そのまま勢いよく脱がせた。 「…んっ」 更に彼は、僕のズボンも一気に脱がせた。 いきなり全裸にされた僕を見下ろして… 彼は、若干息を上げながら、 恍惚の表情で、呟いた。 「…画面じゃない…三次元のカオルさん…」 「…」 そんな彼の厨二発言に… 僕は、全身が総毛立つのを感じながら、思った… やっぱ完全に…変なスイッチ入ったわ…

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