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第32話(R18)
二人で夕食を済ませたあと、いつかと同じように一緒に風呂に入る。伸也は終始透を見ないようにしていて、そういえば前回もあまり視線が合わなかったな、と思い出した。
「だって、見たら自分がどうにかなりそうだったし……」
そう言った伸也に、透は軽く口付けをする。
ベッドに裸で並んで入って、お互いの温もりを感じながら、会話をしつつ互いを高め合った。伸也の手が透の身体の隅々まで撫で、男は初めてだろうに抵抗はないのかと訊くと、もう開き直ったから大丈夫と返ってきて、呆れる。
「なんか……落ち着くのに、ドキドキするの、変な感じ……」
「そりゃ、ドキドキすることしてるからね」
伸也はそう言って、透の身体に半分乗るようにして上に来た。太ももに当たった彼の感触が、透をどうしようもなく落ち着かなくさせる。
「前言撤回。全然落ち着かない」
軽くキスを続けながら、合間にそんなことを呟くと、伸也はクスクスと笑った。その吐息がくすぐったくて息を詰めると、可愛い、とまたキスをくれる。
しかし、伸也はずっとキスをしながら、肝心なところには触らずに撫で回しているだけで、一向に進む気配がない。痺れを切らした透は、伸也の唇を甘噛みし、開いた彼の口から舌をねじ込み彼の舌を絡め取る。驚いたのか、身体を引いた伸也の首に腕を回して逃げられないようにし、いつか彼に目の前で見せたような、情熱的で、官能的なキスを仕掛ける。
「ちょ、透……っ」
慌てたような伸也の声に煽られ、透は片手を動かし伸也の胸の粒に触れた。小さく上擦った声が彼の口から溢 れ、透にも完全に火がつく。
「ふふ、熱くなってきたね? しんちゃん」
「……おまえなぁ……」
「ほらしんちゃんも……触って?」
わざと耳元で甘い声を出して誘うと、彼はひくりと肩を震わせ熱い吐息を漏らす。透は伸也の耳を手で撫で、ここ感じるの? と目を細めて言った。どれも、伸也がいない三年間で覚えたことだけれど、伸也が気持ちいいと思っているなら、無駄じゃない三年間だったな、なんて思ってしまう。
伸也の腰は完全に引けていて、二人の間には大きな空間ができていた。透は彼の足の間を覗き込むと、にっこり笑う。
「透……あんまり煽るなよ……」
「だってしんちゃん、先に進まないんだもん」
「こっちはいっぱいいっぱいなの。少しは手加減して」
伸也がふーっと大きく息を吐き出した。いつも余裕な彼の余裕のなさに、透はますます気分がよくなる。
「ってか、本当に熱くなってきた。座って触り合いっこしよ?」
透の提案に頷いた伸也は、起き上がって布団を退かした。伸也に足を伸ばして座るように言い、透は彼の足を跨 いで座る。そしてまたキスをした。けれど今度は先程よりも深いキスだ。
「ん……しんちゃん……」
おずおずとした手が、透の胸に触れる。そこに彼の指が擦れる度胸がきゅっと締め付けられ、腰の辺りに切ない痺れが走った。優しい触り方は少しもどかしいけれど、十分に透を熱くさせる。
それなら、と透も伸也の胸に触れた。唇が離れた時の互いの息遣いが熱くて、それが嬉しくて、切なくなる。
「しんちゃん……、すき……」
口付けの合間にそう囁いた声が、自分でも恥ずかしくなるほど上擦っていた。伸也もくぐもった声でうん、と返事をくれて、透は彼にギュッとしがみつく。
「……透?」
「しんちゃん、触っていい?」
透は彼の返事を待たずに、自分のと伸也の怒張をまとめて握った。敏感な場所に硬くて熱いものが当たって、更に身体を熱くさせる。
そしてその手を上下に動かせば、伸也も切なげに息を漏らし、透をギュッと抱きしめてくれるから嬉しかった。
「気持ちいい? しんちゃん」
「うん……、……っ、やば、もうイキそう……」
言葉通り身体を震わせた伸也は、本当に余裕がなかったようだ。少し身体を離して彼の顔を見ると、耳まで真っ赤にし、苦しそうな顔をしていた。後ろに回った伸也の手が、ギュッと握られて小さく震えている。
透はそんな彼の唇を優しく啄 む。
「……いいよ。イクとこ見せて?」
そう言って手の動きを速めると、伸也はますます眉間に皺を寄せた。しんちゃんはどこが好きなんだろう? と少しずつ手の動きに変化を付けると、彼は大きく背中を震わせ、透の両肩を指が食い込むほど強く掴む。
「……っ、透……っ」
呻くように名前を呼ばれ、ん? と返事をした瞬間、伸也の熱が放たれた。小さく声を上げながらイク伸也の唇を、またそっと舐めるように口付けると、うあ、と伸也は背中を反らす。
「ふふふ、しんちゃん可愛い……」
「透……もう、お前な……」
息を乱している伸也の唇を、わざとキスで塞ぐと、彼は身体を引いて逃げてしまった。初々 しい彼の反応が楽しくて、ついついからかってしまいたくなる。
恨めしそうにこちらを見る伸也に、透は微笑んだ。そして手に付いた残滓をこれ見よがしに見せる。
「濃いの出たね~」
「いいよそれは。次は透の番」
伸也は透の手を取ると、ティッシュで乱暴に拭いた。照れているのだろうと思うと、可愛いなぁ、とますます愛おしくなる。
伸也は残りの体液も綺麗に拭き取ると、透の肉棒を今度は躊躇いなく握った。さっきまで照れていたのに、と驚いていると、絶妙な力加減でその手が動き出す。
「……っ」
透の背中が震えた。好きな人から与えられる刺激は、他の誰よりも心地よくて、透はうっとりと伸也を見つめる。
「……透、気持ちいい?」
「ぅ、ん……」
透は伸也の肩に腕を回し、ギュッと抱きついた。与えられる刺激に腰が勝手に動くけれど、それが伸也を煽っているなんて、気にしている場合じゃない。
「んん……っ、しんちゃん、それ……それすき……っ」
「……こう?」
伸也が先端辺りで小刻みに手を動かす。掠れて上擦った嬌声を上げると、伸也は慈しむように透の頭を撫でてくれた。それが嬉しくて、胸がいっぱいになって、なぜか透の涙腺が緩んでしまう。
「しんちゃん、オレ、ずっとしんちゃんとこうしたかった……!」
いく、いっちゃう、と泣きながら訴えると、ひときわ大きく背中を反らした。視界がかすみ、音が消え、意識が途切れる。手を離したらどこかに堕ちそうで、伸也の背中に爪を立ててしがみつくと、伸也も息を詰めて呻いた。
どれだけその体勢でいたのだろう。気付いたら身体が冷えて寒くて、ようやく伸也から離れると、彼は安堵の表情を浮かべていた。
「ごめんしんちゃん、良すぎて飛んでた」
「そう……それならよかった」
二人で軽く唇を合わせ、離れる。相手が好きなひとというだけで、こんなにも満足できるのか、と透はへにゃりと笑った。
「ただ触り合っただけなのに、こんなに満たされた気分になるなんて……ありがとう、しんちゃん」
「うん……」
そう言ってまた触れるだけのキスをすると、お互いにクスクス笑いながらイチャイチャした。
それがまた前戯になってしまったことは、言うまでもない。
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