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第35話(R18)

 濡れた音が、キッチンに響く。  透はシンクに押し付けられながら、再び伸也に口内を好きにされていた。  伸也の初めてを奪った時は、何をするにも慎重でびくびくしていたのに、彼は覚えが早く、しかもすぐに応用まで利かせて、たちまち透が翻弄される側に回った。  今も、透の口内を蹂躙(じゅうりん)しながら、胸の突起を服の上から引っ掻いてきて、透はキスどころじゃないと喘ぐ。 「あっ、しんちゃ……やだっ」 「あー……透、可愛い……」  嫌だと言っているのに、伸也はそんな透を見て楽しんでいた。セックスの時の伸也は、とても意地悪になるから困る。困っているだけで嫌じゃないから、それも困るのだけれど。  透は伸也の首に腕を回し、やってくる快感の波に耐えていた。伸也の与えてくる刺激はどれも的確で、透が伸也を愛撫する隙を与えてくれない。出てくるのは掠れた甘い声と、熱い吐息だけ。腰を震わせ身悶え、涙目で彼を見れば、伸也は嬉しそうに微笑むのだ。 「気持ちいい?」 「んん……」  返事とも取れない声を上げ、透は伸也の舌を受け入れる。フワフワと意識が溶け、脱力してもっととせがむと、幼なじみの彼氏はこっちへおいで、と優しく手を引いた。 「け、ケーキ、冷蔵庫に入れないと……」 「……ああ、そうだね」  伸也は余程気が急いていたのか、透の言葉にハッとしたようだった。言う通りケーキをしまい、エプロンを取って──としたところで彼の動きが止まる。 「どうしたの?」 「透、服脱いで」  言うやいなや、伸也は透の服を脱がせていく。下着も脱ぎ、靴下だけになったところで「これを着て」とエプロンを渡された。 「え、……ええっ? やだよ恥ずかしい!」 「いいから」  なぜか言葉に力がこもっている伸也。仕方なく今しがた彼が付けていたエプロンを身に付けると、伸也は可愛い、と感想を漏らした。 「フリフリエプロン、今度買ってあげる」 「い、いい、いらないっ」  まさかしんちゃんにそんな趣味があるなんて、と狼狽えていると、伸也はエプロンの布越しに透の足の間を撫でる。布を押し上げて主張しているそこは、今のひと撫ででじわりと濡れてしまった。 「ほら……可愛い」 「……っ、やだやだしんちゃん、こんなの、恥ずかしすぎるよぉ」  透は涙目で訴えるけれど、伸也は構わずそこを撫で続けるので、透は彼の腕にしがみついて耐えるしかない。 「……だ、やらぁ……っ」 「……透はどうしようもなく感じると、舌っ足らずになるよね。ほら、腰動いてるよ?」  そう言った伸也は、布ごと透を扱く。視界がかすみ、意識が遠くなりかけて、掠れた声を上げると、覚えのある感覚と、制御ができない身体の痙攣が透を襲った。 「──っ! あっ、んんん……っ!」  じわりと伸也の握った場所が濡れて温かくなる。余韻にひくひくと肩を震わせていると、顎を掬われて、深いキスをされた。 「グズグズな透も可愛い……」 「う、しんちゃん、えっちの時人が変わるよね……」  普段は穏やかな伸也が、こういう時だけ積極的になるのを、周りが知ったらどう思うだろうか。 「そりゃそうだよ。ずっと想像しないようにしてきたんだから」  だから今は、ずっとやりたかったことをしている、と言われ、透は顔どころか全身が熱くなった。 「お菓子作りを一緒にした時、生クリームを塗って舐めてみたいとか……」 「わー! もういい!」 「今度しようね、透」  しないよ! と言う透の言葉は伸也の唇で塞がれ、発せられることはなかった。その後、あっという間に身体を反転させられ再びシンクに押し付けられる。エプロンの紐だけがある背中を舐め回され、透はまた声を上げながら身悶えた。  足の力が入らず、もうだめと訴えると、本当だ、また勃ってる、と後ろから袋をやわやわと握られ、透の身体は大きく痙攣した。 「……イッちゃった?」 「んん! しんちゃん……も、やら……ぃれてぇ……」  両膝がガクガクと笑っている。それでも立っていられるのは、シンクに身体を預けているのと、伸也が支えているからだ。頭がボーっとして考えられない──伸也のことしか考えられなくなる。 「だめ。ほぐさないと」 「やらやらっ! やっ、……ああっ!」  透の後ろになんの前触れもなく、伸也の指が入ってきた。その圧迫感と期待に、透はまた意識が飛ぶ。 「あっ、あ……しんちゃ……らめ、らめぇ……っ」  かろうじて残った自制心で伸也を止めようとするけれど、伸也は全く聞く耳を持たないようだ。透の中で彼の指は自由に動き、透の感じるところを寸分違わず刺激してくる。  霞んだ視界と意識がまた飛んだ。強烈な快感に透はシンクの端を指が白くなる程強く掴み、大きく背中を反らす。 「……本当は、僕が開発したかったな……」 「……へ……?」  絶頂のあとのボーっとした頭で、透は聞き返した。けれど彼は構わず、透に楔を埋め込んでいく。 「……ッ! ──ッッ!!」  指とは比べ物にならない圧迫感。好きなひとと繋がっているという精神的な興奮。透はそれらに声も出せないほどに身悶え、触れられてもいない分身から、ボタボタと押し出されるように射精してしまう。 「あ、あ……らめ、らめ、しんちゃ……」  そして伸也が入っているだけで、いい具合に圧迫され、透は全身の痙攣が止まらなくなる。  どこまでも深い快楽に堕ちそうで、透は自分の口元を押さえ、ふうふうと息を整えようとするけれど、意識は勝手に霞んでいった。 「ひ……っ、ぐ……!」 「……ああ透……イクの止まらなくなっちゃったね」  耳元で上擦った伸也の声がする。透は掠れた声で伸也の動きを止めようとしたけれど、ダメだった。

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