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第1話

僕、涌井亨が刑務官になったのは父が刑務官だったという事もあるけれど、本当のところは刑務所に入るような人間とはどのような人間なのかを知りたかったからだ。 大学を卒業し、研修を終えていざ刑務所で働き始めると、僕は僕の前に現れた周りの人間たちの薄っぺらい人間性に失望する事になった。 そこそこの地位にいる父に気に入られたいという欲望むき出しの連中。 彼らは息子である僕に嫌われまいと必死になっていて、浅ましいとしか言いようがなかった。 そんな中、たったひとり、同じ夜勤班になった麻生健夫さんだけは違った。 僕が何者であるかを知っているはずなのに、周りの人間たちとは違って僕に対して何が正しくて何が間違っているのかをきちんと教えてくれた。 そして、仕事をミスなく終わらせられた時には素敵な笑顔で褒めてくれた。 以前から男性に心惹かれる事が多かった僕は、いつしか麻生さんの事が好きになっていった。

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