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第21話

その後。 僕は昇任試験に合格したのと父の力とで健夫さんよりも上の地位に立つ事になり、同時に異動が決まってしまった。 時を同じくして、健夫さんのお嬢様のご結婚が決まり、健夫さんはこれで親としての自分の役目はほとんど終わったと僕に話してくれた。 その言葉に、僕は異動が決まった時から思っていた事を健夫さんに言ってみる事にした。 「僕と一緒に来てくれませんか?貴方と離れるなんて僕には出来ない。異動先で家を借りて、貴方と暮らしたいんです」 「亨……」 夜勤明けでセックスしてベッドで余韻を愉しんでいた時の事だった。 「俺に仕事辞めてついてこいって事だよな」 「そうです。父に貴方も一緒に異動させて欲しいと頼む事も出来なくはないと思いますが、僕は……貴方を独り占めしたいんです……」 「…………」 健夫さんに抱きついて、キスをして。 その厚い胸板に頬を寄せると、健夫さんの鼓動が聞こえてくる。 「昔、嫁に言ったのとほぼ同じ事を言われるなんてな……」 健夫さんはふふっ、と笑うと僕の頭を撫でてくれた。 「確かに俺はもう今まで通り働く理由もなくなった。娘が困った時に助けられる金も少しはあると思うし。だけど、お前はいいのかよ。イケメンで頭も良くて仕事だって出来るのに、結婚もしないでこんなおじさん養う人生でさ」 「何度も言ってるじゃないですか。僕は貴方以外の人を愛するつもりはないって。貴方がいてくれたら僕は何も要らないんです」 この身体を、心を、離したくない。 今日もその想いが溢れて、健夫さんの身体中に僕の跡を残してしまっていた。 最近は平気で目立つ場所にもつけて、健夫さんに恋人が出来た、相手は僕かもしれないという噂も出始めているのを僕は知っていた。 「……分かった。俺の全部、お前に預けるよ。次の夜勤の時に仕事辞める話、してくるな」 「建夫さん……ありがとうございます……!!!」 これでずっと一緒にいられる。 その嬉しさを噛み締めると同時に、新たな願望が僕の心に沸き起こった。 健夫さんが退職する前に刑務所の中でセックスする。 僕はこの欲望を果たすべく、限られた時間の中でどうしたらそれを達成出来るのか、あらゆる可能性を模索した。 そして、何とかその計画を実行する方法を見つけられた。 それは、異動前にシフトを作る勉強がしたい、と父に頼み、僕はひと月……健夫さんが辞めると決まった月のシフトを作らせて貰う……というものだった。 いつもシフトを作っている上司からは面倒臭い事を引き受けてくれて助かると感謝され、夜勤班のメンバーからはいつもよりキツくないシフトにしてくれてありがたいと感謝された。 夜勤の度に同じ仮眠時間では疑われると思い、たった1日だけしか作れなかった刑務所での健夫さんと2人きりの時間。 それを建夫さんの夜勤の最終日に設定した僕は、その日を楽しみに待った。

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