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第34話 漠然とした不安感
ぬるりと忍び込んできた愁実の舌が、俺の口腔内を擽る。
唇を重ねつつ、身体を這い下りた愁実の手が俺の股間を掴む。
当たり前に硬さを増しているその場所を、愛おしそうに、ねっとりとした手つきで撫で擦られる。
口腔内を這い回った愁実の舌が、満足したかのように俺を解放し、離れていく。
こんなに傍にいるのに、不安が影を落とす。
なにがそう思わせるのかは、わからない。
だが、ほんの少しでも意識を逸らせば、ふわりと消えて無くなってしまうのでないかという胸騒ぎに、心の奥底で警笛が鳴り響く。
目の前の身体を、ぐっと抱き寄せた。
愁実の胸許に、ぴたりとつけた耳からは、どくんどくんと血液を送る心臓の鼓動。
大切な温もりは、今ちゃんと、俺の腕の中にある。
「なんだよ……?」
急に甘えるように抱きついた俺に、愁実の笑い声が降ってくる。
「なんでも…」
腕の力を緩め、愁実をやんわりと押し倒した。
床に横たえられた愁実の手が、俺の頭へと伸びる。
子供を褒めるかのように、愁実の手が俺の頭を撫でた。
「笑ってよ。オレの胸ん中に、刻んでくれるんだろ?」
頭から滑った手が、頬に触れた。
どこか泣き出しそうな色を抱えた愁実の笑みが俺を見上げる。
「そうだな」
ぐっと口角を上げ、愁実を見下ろした。
温かな気持ちからくる柔らかな笑みを湛えたかった。
でも、浮かんだ笑みは、獲物を手中に収めたという優越の空気を色濃く侍らせる。
俺の性根からくるものだ。
人の上に立つようにと教育され続けた俺は、穏やかな笑みなど浮かべられない。
どうしたって、人を押さえつけ周りを威圧してしまう。
それでも愁実は、満足げに俺を見詰める。
お前になら支配されても構わないと、心酔の色を浮かべる瞳に、ぞくりと背が震えた。
愁実の纏う衣服を剥がしながら、頸と胸許、脇腹だけでは足りない痕を、残していく。
転がるローションのボトルを手繰り寄せ、掌で温め、慎ましく閉じているアナルに触れた。
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