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第33話 傍に居れば笑っていられる

 芯を持ち、ぷっくりと膨れた場所に柔く歯を立て刺激する。 「ん………っ」  歯に感じる反発と鼻にかかる甘えたな愁実の吐息に、腹の底がじわりと痺れた。  愁実の身体を撫でながら、側に置いてあった鞄を手繰り寄せ、ローションやゴムを引き摺り出す。  指先を滑らせる度に、小さく蠢く愁実の身体。  遠慮気味に揺らぎ始める腰に、愁実のベルトを緩め、前を寛げる。  開いた場所から両手を差し込み、下着越しに尻を揉む。  舌で転がす乳首も、指先が食い込むほどに揉む尻も、愁実の股間へと熱を集める。  密着する前面に、硬くなった愁実のペニスが俺の肋を掠る。  興奮度合いを如実に伝える硬いペニスを無意識に擦りつけてくる愁実に、堪らず胸許に歯を立てた。  食い込んだ犬歯は、内出血を起こさせる。  乳首のすぐ上に、くっきりとした噛み痕が、色鮮やかに浮かび上がった。  この身体は俺のものだと、所有の証をそこに刻んだ。  満足げにその証に舌を這わせる俺に、愁実のくすりと笑う音が降ってくる。 「痛いのは、好きじゃねぇけど……、お前につけられるなら悪くないな…」  くすりと嬉しそうな音を含んだ声を漏らした愁実は、言葉を繋ぐ。 「もっと、つけていいよ。……ここの奥にもさ、痕…つけてよ」  心臓辺りを指先で示しながら、憂いた顔で強情る愁実。  心の奥にも、同じ証を刻めと宣う愁実に、物理的に無理だと苦く笑む。 「ごめん。なんでもない……、忘れて」  ははっと、諦めの音を纏う空笑いが響く。  出来るならば、見えない心にも爪を立て、痕を残したい。  だが、触れられず見えもしない心は、俺にどうこうできるものじゃない。 「どうしたら、刻める? 俺に出来るコトなら、なんだってしてやるよ」  胸許に(とど)まっている愁実の指先に、唇を押し当て、上目遣いに見上げた。  胸許から離れた愁実の手が、俺の頭をぎゅっと抱く。 「なんでも、してくれるんだ」  ふふっと笑った愁実は、言葉を繋ぐ。 「じゃあ、幸せになって。オレは、お前の笑顔が一番大事だから。お前の笑顔を、ここに刻みたいからさ」  愁実の唇が、俺の髪にキスを落とす。  お返しにと、俺は愁実の脇腹に歯を立てた。 「俺は、お前が傍に居れば笑っていられる」  肉を喰い千切るかのように、力を加える。  だが、噛み切れるはずもなく、そこには紅い内出血の痕だけが残る。 「……っ。は、…あ………」  痛みに呻いた愁実の指先が、鮮やかな所有の証を満足げに撫でていく。 「お前が傍に居れば、幸せだ」  痕をなぞる手を取り、その指先に唇を落とした。  どこぞの王子が姫に求婚するような俺の振る舞いに、愁実の笑い声が降ってくる。 「……プロポーズみてぇだな」 「そう取ってくれていい。俺は、ずっと、お前と……」  一緒にいたい、…そう告げようとした唇は、愁実のそれに塞がれた。

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