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第32話 ただ好きなだけ
都市部にある大学への進学。
それが俺の決められたルートだ。
今の俺の学力でも、入るのは容易い。
その大学には、高校と同じような奨学金制度が設けられており、愁実には俺の進路を伝えてある。
愁実も、同じ大学に進学するコトだろう。
キスを落とした場所から、愁実の肌が紅く色づいていく。
視覚から煽られている気がして、その場所に噛みついた。
「………っん」
淡く噛みついた俺に、肩を竦めた愁実が振り返る。
俺の頬を両手で包んだ愁実は、とろりと蕩けた瞳を向けてくる。
「郭遥……」
柔らかく熱を含んだ声で呼ばれる名は、俺の脳をも震わせる。
「……好き、だ」
絞り出されるように紡がれた愁実の声。
照れくささを誤魔化すかのように、唇が重なる。
面と向かい座り、膝を立てた足を絡ませ身体を寄せた。
「俺も。好きだよ、任……」
愁実の腰に手を回し、抱き寄せながら、ちゅっと額にキスを落とした。
愁実のシャツのボタンを、1つずつ外していく。
覗いたインナー代わりのTシャツを捲り上げ、露になった腹から胸許へと、つっと指先を滑らせた。
期待に膨らむ胸の飾りが、俺を惑わせる。
床に投げ出した俺の腿の上に愁実を座らせた。
体重をかけぬようにと膝で立つ愁実の胸が、目の前にくる。
顔を寄せ、存在感を増し勃ち上がる乳首を、唇で挟み込んだ。
「……っん」
芯のあるそこを唇で捏ねれば、愁実の手が俺の頭を抱く。
じわじわと朱に染まっていく肌を、指先で擽る。
勉強会の後、2人きりの空間になれば、決まってセックスをしていた。
何度となく、どこかに出掛けないかと誘いをかけてみたが、はぐらかされ続けていた。
学校での態度も、恋人には程遠い素っ気ないものだ。
愁実が心のままに甘えてくるのは、この時間、この空間だけなのだ。
確かに、俺たちの関係は世間一般の〝普通〞から、はみ出ている。
だが、それがどうしたというのだろう。
誰にも、迷惑はかけていない。
ただ、目の前の男が好きなだけだ。
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