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第31話 部屋の所有者

 俺たちの勉強会は水曜日の放課後と土曜日の昼間2時間程度に、固定されつつあった。  家に帰りたくない理由がありそうな愁実にも、部屋の鍵を預けた。  いつか話してくれるまで、俺は無理には聞かないと決めた。  借りたアパートは、玄関を入って右側にユニットバスがあり、正面に6畳ほどの部屋が2つ。  床は、フローリングだ。  家具家電付きと言えば聞こえはいいが、どうやら前の住人が置いていったものを、そのまま利用しているだけらしい。  オール電化で、IHのクッキングヒーターは元からの備えつけだが、その他の家電は、小さな冷蔵庫と温め機能しか持たない電子レンジ、旧型のエアコンだ。  家具は、小さな丸テーブルとマットだけが置かれたシングルベッド。  さすがに、布団は処分したらしい。  俺の友人、泊里の他にも、愁実の友人である佐野や駒井など、2、3人が、入れ替わり立ち替わり訪れるようになった。  10月の中間テストまで1週間を切った頃。 「はぁ~っ。頭割れそうっ。もぉ、無理っ」  先程まで集中して勉強に励んでいた泊里が、頭を抱え、背後に倒れ込む。  なぁ、と寝転んだままに声を放ってくる泊里に視線を向けた。 「どっか行かね?」 「俺は、もう少し」 「そ。清白が行かねぇんなら、愁実もいかないよな」  あっさりと俺と愁実を諦めた泊里は、他の奴らを誘う。  数分後には、この部屋は俺と愁実の2人だけの空間となる。  他の奴らが出ていったのを確認した俺は、ぱたりと参考書を閉じ、玄関へと向かった。  鍵のかかった扉に、ドアチェーンをかけ、間違って戻ってきたとしても入ってこられないようにする。  玄関から戻った俺に、愁実は少し困ったように笑む。  丸テーブルに向かい座っている愁実を抱き締めるように、背後に腰を下ろした。  後ろから腰を抱くように回した腕に、愁実も開いていた教科書を閉じる。 「勉強する気あんの?」  俺の胸にぽふりと後頭部を預け、問うてくる。  愁実の頭頂部に鼻先を埋めながら、声を返す。 「勉強したいのは、あいつらで俺じゃない。ちゃんと教えてるし、家賃も俺持ち。こういう使い方をしたっていいだろ」  俺の屁理屈に、愁実は身体を起こす。  離れた身体に、まとめられている髪を避け、愁実の(うなじ)にキスを落とす。 「俺もお前も、こんなに勉強しなくても余裕だしな……」

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