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第一章 私は医者だよ
「僕、こんな生活、もうイヤだ」
青葉 亜希(あおば あき)は、白い裸身を大きなベッドに投げ出して、涙を一筋流した。
手には、紙幣が握りしめられている。
亜希は、その体を売り物にして稼いでいるのだ。
そして、今夜初めて客に中出しを許した。
『ね、亜希ちゃん。中に出させて。おじさん、もう我慢できないよ』
『いけません。僕オメガだから、妊娠しちゃうかも』
『アフターピル飲めばいいよ。ね、10万円あげるから!』
『10万円……』
高額のボーナスに負けて、亜希はその体内に生温かい体液を受け入れた。
しかし、時が過ぎゆくほど、その穢れは彼を蝕んだ。
客は、もういない。
明日の朝早くに、ゴルフに誘われている、と先に帰ってしまったのだ。
「体、洗わなきゃ」
そして、体内に残った忌まわしいものも、掻き出してしまわねば。
重い体をのろのろと起こし、亜希はバスルームに向かった。
冷たいタイルに足を乗せ、泣きながら身を清めた。
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