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第四章 愛人契約
「何て、毒々しい色だ……」
啓は、亜希に手渡されたアイスクリームを前に、つぶやいた。
ここは、ショッピングモール内にある、アイスクリームショップ。
啓のはからいで、無事にアフターピルの服用を済ませた亜希が案内して、やって来た。
お礼に僕が御馳走します、と言って譲らない亜希が啓に差し出したのは、チョコミントとオレンジソルベのダブル。
どちらもポップな色をしているが、見ようによっては確かに毒々しい。
「ご、ごめんなさい……」
「いや、失礼。せっかくなので、ご馳走になろう」
啓としては、老舗のパーラーで、新鮮な材料を使った無添加のアイスクリームを食べるつもりでいたのだが。
それでも、甘くて冷たい亜希のアイスクリームは、啓の咥内を潤した。
この代金も、きっと彼が文字通り体を張って手にしたものなのだ。
卑下したりすると、罰が当たる。
「どう、ですか?」
「うん。とても美味しい」
途端に晴れた亜希の表情に、啓は目を細めた。
(素直で、優しい性格の子だ)
啓が一口食べたのを見届けてから、自分もアイスクリームを舐め始める亜希。
そんな、ちょっとした気のまわし方も、啓は好意的に見ていた。
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