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第四章・2

「ああ、美味しかった!」 「亜希くん。コーヒーも飲まないか?」 「僕、買ってきます」  カウンターに素早く並ぶ亜希に、啓は声を掛けそびれた。  コーヒーは他の店で、と考えていたのに。 「まあ、いい。毒を食らわば皿まで、だ」  添加物たっぷりのアイスクリームを出す店のドリンクに、啓は期待していなかった。 「はい。菱先生、どうぞ」 「ありがとう」  紙コップに、コーヒーが湯気を立てている。  一口飲むと、やけに薄くて酸っぱい。 (心が折れそうだ)  だが、亜希を見ると、やはり不安そうにこちらを覗き込んでいる。 「温かくて、美味しいよ」 「良かった!」  亜希は、コーヒーに砂糖とミルクを入れている。 「私も、そうするかな」  啓も亜希に倣って、飲み物を加工した。 (これで、少しはましになるだろう)  普段はブラック派の、啓だ。  しかし、このコーヒーは、そのままでは飲める代物ではない。  黒からブラウンに変色したコーヒーを飲みながら、啓は亜希と会話を始めた。

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