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第十章・4

 くすくすと、利実は笑い出した。 『ああ、バレちゃったか』 「やはり、君の仕業か」 『どう? 少しは……』 「二度と、こんな真似をしないでくれ!」  初めて聞く、啓の怒声だった。  利実だけでなく、亜希も驚いた。  優しくて、いつも冷静な啓さんが。  こんなにも、怒りをあらわにして。 『怒らないで。もう、しないから』 「よろしく頼む」 『それで、ね。啓さんは……』  利実は何か言いかけていたが、啓は一方的に通話を切った。

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