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第十三章・3

 身を固くする亜希に、啓はいたずらっぽく話しかけた。 「実は彼には、とても手こずってね」 「重篤だったんですか?」 「いや。私がまだまだ若すぎて、信用できない、と……」  そこに、大きな湯のみでお茶が出された。 「先生。もう、勘弁してくださいよ。先生がいなけりゃ、私はあのまま死んでたんですから」  笑う啓と松前だったが、亜希はしげしげと、この若き外科医を眺めた。 (啓さん、すごく優秀なお医者さんなんだ)  そして、救った患者と笑い合っている。 (僕も、こんな風になれたらいいな)  啓が目指すのは、内科医だ。  だが、啓を手本にしたいところは多かった。  研究熱心なところや、ていねいな経過観察をするところ。  呼び出しがあれば、たとえ夜中でも患者の元へ走るところ。 (エッチしてる最中にコールがあった時は、焦ったけど……) 「亜希。何を食べたい?」 「え!? あ、はい!」  亜希は慌てて、メニューを開いた。

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