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第十七章・4
「あれ? 固定電話から、コールが」
啓のマンションで観葉植物に水をやっていた亜希は、急いで電話に走った。
受話器を取ろうとして、ふとためらう。
「詐欺電話、なんかじゃないよね……」
留守録を確認したが、オンになっていない。
仕方なく、亜希は恐る恐る受話器を上げた。
「もしもし……」
『亜希くん。もう、大丈夫? 元気になった?』
電話をかけて来たのは、利実だった。
彼はあの過ちを、何度も詫びた。
そして、亜希の身をいたわった。
「もう、いいです。僕も、おかげさまで元気になりましたから」
『良かった。啓さんは、優しくしてくれた?』
「はい」
「そう。そうだよね。あの、ね……」
「利実さん?」
『僕、彼との婚約、解消したから』
驚きの発言に、亜希は言葉を失った。
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