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第十七章・5
『でも、君はあくまで愛人だから。婚約者は、僕。忘れないでね』
あんなことを言っていた、利実。
その彼が同じ口で、婚約解消と。
言葉を失っている亜希に、利実は話し続けた。
『啓さんが愛しているのは、僕じゃなくって、亜希くん。それが、解っちゃったんだ』
「で、でも……」
『もちろん、恋愛と結婚は、別物。だから僕は、啓さんと結婚する気でいたよ』
「……」
『僕だって、啓さんのことが好き。でも亜希くんは、僕以上に彼のことが好きなんだ』
「……」
黙ってしまった亜希に、利実は笑いかけた。
『ごめんね。自分のことばっかり、喋って』
「い、いいえ」
『受験勉強は、どう? 医大、合格できそう?』
「今のところ、順調です」
亜希がようやく話せるようになったころを見計らって、利実は最後の言葉を告げた。
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