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第十七章・6
『僕、感じるんだ。啓さんと亜希くんは、運命のつがいだ、って』
「え!?」
『啓さんに、言っちゃダメだよ。彼、迷信とか嫌いだから』
「は、はい……」
じゃ、またね。
そんな軽やかな言葉を残して、利実からの通話は終わった。
亜希は受話器を置いて、しばらく宙を見ていた。
「利実さんも、啓さんのこと好きなはずなのに」
だのに、身を引いてくれた。
『僕、感じるんだ。啓さんと亜希くんは、運命のつがいだ、って』
利実の声が、思い出される。
「僕と啓さんが。運命のつがい……」
確かに迷信めいたその言葉は、現代医学の世界に身を置く啓なら嫌がりそうだ。
「でも、利実さん。この言葉、大切にします」
温かな利実からのエールを胸に秘め、亜希はありがとう、と呟いた。
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