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第十八章 新しい関係
帰宅した啓は、亜希の言葉に驚いた。
「利実さんから、電話がありました」
「彼と話しても、大丈夫だったか? 気分が悪くなったりしなかったか?」
啓は、利実と会話することで、亜希があの恐怖体験を思い出したのでは、と心配した。
だが、それは思い過ごしのようだ。
亜希は落ち着いた様子で、大丈夫です、と啓を安心させた。
「それで。利実くんは、何と?」
「啓さんとの婚約を、解消したって。これは本当ですか?」
何という鮮やかさだ。
ここに来て初めて、啓は利実に好感を抱いた。
さすが、王子家の子息。
その潔さ、気の配り方は、普通ではない。
「私のところには、彼のお父様がいらしたよ。やはり、同じようにおっしゃった」
「それで、啓さんは?」
「私も、同意した。利実くんとの婚約は、解消することになった」
は、と亜希の顔色が変わった。
その様子を、啓は不思議に思った。
てっきり、喜んでくれるかと考えていたのに。
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