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第十八章・2
亜希は、静かな声で啓に言った。
「じゃあ、僕との愛人契約も、おしまいですか?」
「え!?」
啓は思わず、口を手で覆った。
何という、迂闊。
亜希の愛らしさに、のぼせ。
その体に、溺れ。
デートを重ねては、浮かれ。
「肝心なことを、失念していたとは……!」
啓の妙な様子に、亜希は首を傾げた。
「啓さん?」
「あ、いや。何でもない。ただこれは、非常に大切なことなので、少し時間が欲しい」
「変な啓さん」
だが、今すぐに契約が解消されるようでは、ない。
亜希はひとまずホッとして、啓をいたわった。
「お疲れでしょう? お風呂に入ってください。お食事の準備、しておきますから」
「ありがとう」
キッチンに消える亜希の後姿を見て、啓は深い息をついた。
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