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第ニ十章・3
「亜希くんが、啓さん最近忙しい、って言ってたから」
利実は啓のスマホではなく、勤め先の病院へ電話した。
午後からは手術の入っている、啓だ。
急いで軽い昼食を摂っている時に、外線が回ってきた。
「もしもし」
『菱先生。王子さま、とおっしゃる方から、お電話ですが。取れますか?』
「繋いでください」
啓は、利実の父の顔を思い浮かべていた。
利実との婚約を解消して久しいが、まだ何かあるのだろうか?
そう考えながら、通話を繋いだ。
「菱です」
『啓さん。この、やぶ医者!』
「……利実くんか?」
『亜希くんの体調変化に、気づいてないの?』
利実は啓の監督不行き届きをたっぷりと罵りたかったが、そこはぐっと我慢した。
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