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第ニ十章・2

 利実は、さりげなく亜希に問診を始めた。 「ね、だるいな~、とか感じたり、しない?」 「そうですね。確かに最近、疲れやすいかな……」 「どこか、痛い所ある?」 「強いて言えば、胸が。押さえつけられたみたいに」  胸が痛む、と聞いて、利実は眉をひそめた。  その仕草に、亜希は慌てて手を振った。 「あ、でも! 大したことありませんから。大丈夫ですから!」  そして、お願いした。 「今の話、啓さんには内緒にしていてくださいね。余計な心配は、かけたくないから」 「うん。解った」  すぐに利実は紅茶のカップに口をつけ、離した時には映画の話などした。  だがしかし。 (啓さん、亜希くんの異常に気付かないなんて!)  心の中では、チクる気満々だった。

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