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第二十章 崩れた日常

 冬になった。  本格的な受験シーズンの到来だ。 「それで、勉強はうまく進んでる?」 「はい。志望校のランクを上げました」  亜希が大学の名を口にすると、利実は嬉しそうに両手を合わせた。 「僕の卒業校!」 「利実さんの、後輩になります」  亜希は、勉強の合間の息抜きに、時折利実とお茶を楽しむようになっていた。  利実は亜希を弟のように可愛がり、亜希は利実を兄のように慕う。  二人の関係は、良好なものへと変わっていた。  その利実が、身を乗り出して亜希に言った。 「じゃあ、入学したらいろいろと学校のこと、教えるね」 「ありがとうございます。お願いします」 「山本教授は、早漏。川尻教授は、前戯が下手。海堀教授は、テクニシャン……」 「と、利実さん……」  ちょっと気が早いか、と利実は舌を出した。  そんな軽口を叩きながらも、利実は亜希を観察していた。 (一見、元気そうに見えるけど……)  前に会った時より、顔色が良くない気がする。 「ね。啓さんとは、ちゃんと毎日会話とか、してる?」 「啓さん、最近は手術が多くて。なかなかゆっくりできないんです」 「そう……」

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