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第ニ十章・5
「いやだなぁ。僕、どこも悪くありませんよ?」
「念のためだ。軽い気持ちで、受けてくれ」
「この日は、最後の模試があるんです」
「健康診断の方が、重要だ」
啓と亜希は、マンションでこんな会話を交わしていた。
医師志望でありながら、亜希は病院にかかることがあまり好きではない。
「もし病気だったら、どうしよう、って。怖くなるんです」
「その時は、私が責任を持って治してやるから」
それほど言うなら、と亜希は健康診断をOKした。
診断は、三日後。
それまでセックスはしない、と啓はベッドの中で宣誓した。
「だ、ダメなんですか?」
「激しい運動は、体に毒だ」
「激しい運動……」
確かに、激しい。
亜希は諦めて、瞼を閉じた。
「その代わり」
啓が、亜希を優しく両腕で包んだ。
「こうやって、抱いていてあげるから」
啓の温かさを感じながら、亜希は眠った。
この幸せが、永遠に続くと信じていた。
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