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第二十一章・3

「亜希くん。調子はどう?」 「利実さん!」 「あ! また病室で受験勉強なんかしてる!」  利実は、ベッドの上で半身を起こし、ノートとタブレットを隠そうとしている亜希を、叱った。 「ちゃんと静養してないといけないじゃん」  でも、と亜希はすがるような視線を、利実によこした。 「僕、いつまでこうしてなきゃいけないんでしょうか?」  年が明けると、試験を受けなければならない。  そんな身でありながら、ただ漫然と病院で過ごす毎日に、亜希は焦っていた。 「啓さんは、亜希くんに何て言ってるの?」 「検査入院だから、すぐに退院できる、って」  だのに、大部屋でなく、個室。  毎日往診に来てくれる啓は、日に日に疲れているようだ、と亜希は利実に訴えた。

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