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フクロウとカミソリ王(1)

 (たすく)はホテルのドアを背に追い詰められていた。 「こういうの壁ドンって言うんだっけ」そう混ぜ返したいのに、見つめてくる眼差しは鋭く、言葉は行き先を見失う。  ベッドサイドのかすかな灯りしかない、五月の夜は青かった。汗と整髪料と、さっきまでいた店の酒の匂いが間近に香って、その生々しさに息を呑む。  東京本社から来た年下の営業部エース、理央(りおう)の声は、仕事中とは裏腹に湿り気を帯びている。 「俺、SEX下手じゃないです。――試してみます?」

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