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第1話
ベータに手を出したのは遊びだった。
遊ぶのはベータに限っていたからだ。
発情期のオメガとセックスなどしてしまったなら、そう、その発情に当てられて自分も発情してしまったなら、そして、その状態でセックスしてしまったなら。
そのオメガには、アルファは【執着してしまう】。
まして番になどしてしまったなら大変だ。
他のアルファには絶対に渡せなくなる。
それこそ、自分に番がもういたとしても、だ。
発情期じゃなくても、オメガ相手だとそのオメガを自分のモノみたいに思ってしまうのは、アルファにはありがちなことで、せっかく番の可愛いオメガがいるのに面倒なことになる。
何より、アルファの本分とはアルファ同士の「戦い」にこそある。
それはベータのくだらない下世話な争いとは違う、アルファ同士の全力の戦いのことだ。
2人のオメガを抱えてしまうと、唯一の安らぎを与えてくれるはずだったオメガとの時間まで失ってしまい、競争に支障をきたす。
絶対にそれは避けたかった。
アルファの自分のオメガに対する執着は「愛」などというものではない。
絶対に手放さないモノだ。
だからこそ、番は一人でなければならない。
複数にしてしまえば、その執着が生活や戦いや精神に支障をきたすからだ。
だから下手にオメガと遊ぶわけにはいかない。
オメガとするのが一番良くても、だ。
二人以上の番をもつアルファは廃人になる。
何故【番】それが、一対という意味なのか、
一対一の関係てなければならないのかを思い知らされることになる。
アルファの執着は狂気だ。
番のオメガでしか受け入れることはできない。
その狂気を二人のオメガに向けるのは相当な精神的負担になり、その上、過酷なアルファの競争の中で、アルファはさらに摩耗していく。
それはオメガをもを巻き込むことになる。
オメガも一人のアルファしか求めないのが本能だから、二人のオメガを持つことを受け入れることが出来ない。
なので病む。
それでもオメガはアルファから「去る」ことは出来る。
番は生涯一人だが、アルファから離れることはできる。
番のアルファ以外の子は産めないし、他のアルファに発情することもないが、発情期の辛さはあっても、アルファから離れることはできるのだ。
まだ番のいないアルファの相手をしたり、ベータ相手で多少は発情期の辛さを和らげることもできる。
だが、アルファがオメガを去らせることは少ない。
アルファの執着は狂気だからだ。
オメガはアルファに殺されることが多いのはそのせいだ。
去るオメガを認められないから。
手放すくらいなら。
それがアルファだ。
だからアルファは出来る限りオメガとは遊ばない。
番になる心配のない、番を無くした、もしくは運良く番のアルファから逃れられたオメガと寝ることはあっても。
それも、やはり多少執着が生まれて、まあ、色々と問題は引き起こしてはいるが。
とにかく。
遊びはベータに限る。
これが多くのアルファの考えで。
だから、ベータと遊んだのはそんなに深い意味はなかった。
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