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八月第五週①-② ※※
結局、絵が出来上がったのは夜も更けた頃だった。いつまでも縁側にいるとおばあちゃんに叱られると言うので、仕上げの作業は俺の部屋で、わざわざ汀の部屋から文机を持ってきて行った。
昼間は宿題を手伝い、夜は絵のモデルになって、首や肩や腰が痛いったらない。さっさと布団を敷いて横になっていた俺のところへ、汀は嬉しそうに、完成した絵を持ってきた。
「できたから見て!」
四つ切の画用紙いっぱいに、俺の姿が描かれていた。一生懸命丁寧に描いたことは伝わってくるが、お世辞にも上手いとは言えない。描き慣れていない感じがして、遠近感や陰影なんかもめちゃくちゃで、塗り方も甘い。そもそも、題材がこの俺だ。ここへ来てから何度も洗濯している草臥れた寝間着を着た、締まりのないつまらない男だ。
それなのに、どういうわけか惹き付けられる。世界の名画と並べても見劣りしないのではないかと思わせる、よしんばパリのルーブル美術館に飾ってあっても違和感がないのではないかとすら思える、不思議で奇妙な魅力がある。
「どう? 結構よく描けてるよね」
「うーん、まぁ」
「何それ、もっと褒めてよ」
「俺、絵とか詳しくないからさ」
「詳しくなくても分かるでしょ」
「まぁ、気持ちを込めて描いたのは分かるな」
「えっ」
俺が苦し紛れに感想を捻り出すと、汀はなぜか頬を赤らめた。
「うそ、どんな気持ちで描いたかとか、分かっちゃうの?」
「ん? んー、まぁ」
「おれが岳斗さんを好きなの、先生にバレちゃう?」
「は?」
俺は思わずズッコケそうになったが、汀は冷や汗まで浮かべて真剣だ。画用紙と睨み合って、この絵の処分をどうするか、目下検討中といった具合である。
「もし教室に飾られたら、クラスのみんなにも見られちゃうよね? どうしよう、今更描き直してる時間なんてないのに……」
「そうかもな」
「もっと真面目に考えてよ、せっかくよく描けたのに……」
「うんうん、ほんと、よく描けてる」
「ちょっと、岳斗さんってば」
俺は、どうしても堪え切れずに吹き出した。汀は、きょとんとして目を丸くする。
「いや、悪ぃ。揶揄ったつもりはなかったんだけど」
「揶揄ったの!?」
「いや、だから、揶揄うつもりはなかったんだって」
俺は汀の腕を引いて、布団に押し倒した。汀は丸い目で俺を見上げる。
「お前って、時々すんごいポンコツになるよな」
「な、なんで急に悪口」
「そういうところ、可愛いと思って」
汀の丸く開いた口に、軽く舌を入れて舐めた。歯列をなぞり、上顎を撫で、舌を絡める。ひたむきな汀の気持ちに応えたくて、今夜は一段と丁寧なキスを心掛けたが、汀はビクッと体を跳ねさせた後、真っ赤になって動かなくなった。ただ小さい口を目一杯開いて、口唇の愛撫を享受している。
俺は、パジャマの上から汀の体を撫で、裾に手を忍ばせた。汀はキスに夢中で気付いていない。服をたくし上げながら薄い腹を撫でると、くすぐったそうに身を捩り、平らな胸のささやかな突起に触れると、わっと目を見開いた。
「やだ、それ……くすぐったい」
両方の尖りを指の腹で擦ると、汀は喉を反らして嫌がる。
「ん、んー、やだぁ」
「そんなにくすぐったいか?」
「ていうか、なんか、変な感じする。おしっこしたくなる」
「そりゃあお前……」
気持ちいいってことだろうが、と言おうとしてやめた。ほんの僅かに固くなった乳首をしばらく撫でてみたが、汀がやっぱりくすぐったくて嫌だと騒ぐので、今回は諦めた。その代わりと言っては何だが、下着とズボンとを纏めて引きずり下ろすと、「明るいのやだ」なんて可愛いことを言うので、俺は電気を消した。
汀のそこを間近でよくよく見るのは、考えてみれば初めてのことだった。触覚で感じていたのよりもずっとちんまりとしていて稚く、産毛さえなくてつるりとしていて、ポークビッツというよりは黄金糖に近い印象を抱いた。
「ん……えっ!?」
それを口に含むと、汀はがばっと飛び起きた。
「えっ、え? なんで、なに? 食べて……?」
「……知らない?」
「し、知らな――やだっ」
「静かにしろって」
「あ、んん……」
暴れないように太腿をしっかり押さえ込んで、俺は、汀の股座に顔を埋めた。汀は、うんと背中を丸めて俺の頭を抱え込んだ。抗議のつもりか、俺の髪をその指に絡めて、握りしめる。
「んぁ、んん……やだ、や、だぁ……っ」
年齢以上に幼い性器だが、刺激に応じる程度には発達している。皮は剥いてあげなくてはならないが、その先端は勝手に濡れる。口当たりは極上の滑らかさで、ソフトクリームのようだった。溢れる甘露がもったいなくて、吸引力の変わらない掃除機よろしく吸ってやれば、汀は腰を震わせて悶える。指を噛んで声を殺す姿がいじらしい。
「やッ……だめ、も……でちゃうぅ……ッ!!」
切羽詰まった声が聞こえ、髪の毛をぎゅうと引っ張られて、まもなく、口の中に温かいものが広がった。汀の腰が、ガクガク揺れる。俺は、迸った若い液体を、最後の一滴まで吸い取って飲み干した。いくら子供のものだとしても男性器を舐めるのは初めてで、もちろん精液を飲むのも初めてだったが、自分でも驚くほどに抵抗感がなかった。
汀は激しく呼吸を乱し、ぐったりと布団に伏せた。クリームパンのようにふっくらとして丸みを帯びた尻が、無防備にこちらへ向けられる。成人女性のそれよりは肉付きの悪い、けれど艶とハリは一級品の、小さなお尻。磁石のN極とS極が引き合うように、俺の手は自然とそこに吸い寄せられた。
「ぁ……」
生まれたての青虫のように、汀は布団の上で力なく蠢く。
「や、いや、がくとさ……」
「何が嫌なんだよ。くすぐったい?」
「ぅんん……ぞわってするから、やだぁ……」
俺は、ただ尻を撫でているだけだ。焼きたてのパンのように熱くて、溶けたバターのように滑らかで、指が沈むほど柔らかい尻を、優しく撫でているだけ。それでも、汀は俺の手から逃げたいらしく、弱々しくシーツを掻く。
「な、なんで、こんなことするの……?」
「こんなことって?」
「お、おしり、触ったり……あ、あそこ、舐めたり……」
「そりゃあ、そういうもんだからな」
「? どういう意味……」
俺は、汀からは見えないように下着を脱ぎ捨てた。血の巡りが良く大きく育ったそれを、うつ伏せになった汀の薄い尻の谷間に擦り付けると、ビクッ、と細い背中が弓なりに撓う。驚いた汀が振り返ろうとして体を起こそうとするのを、俺はキスで誤魔化しながらやんわりと制した。腕の中に閉じ込めて、後ろからしっかりと抱きしめる。
「な、なに? なにしてるの?」
「気持ちいいこと」
「これが……?」
汀は、怪訝そうに眉を顰めた。くすぐったいのか、何か収まりが悪いのか、もじもじと尻を揺らす。ちょうど性器と擦れて、こちらとしては大変気持ちがいい。俺は、ゆっくりと腰を前後させた。尻の間を行ったり来たり、我慢汁を塗り付けて滑らせる。
「お前は何もしなくていいから」
擬似挿入のようで、どうしたって息が上がる。唾液が溢れてきて、飲み込むのに必死だ。もっともっと腰を振りたくりたいが、床がギシギシ鳴るのは勘弁なので、動きは緩慢にならざるを得ない。どうにも物足りない。
「んッ、んん……やだ、ぬるぬるする……」
汀は顔を伏せ、シーツにしがみついた。肩や腰が、小刻みにピクピク震えている。俺は、汀の服を捲り上げて、露わになった背中にキスを落とした。
「もうちょっとだから、な」
双丘を両手で掴んで中心へ寄せ、自身を挟んで圧迫し、そうしながら腰を振った。柔らかい尻が、突かれて自在に形を変える。我慢汁のぬめりも手伝って、まるで本当に処女を奪ってしまったかのように錯覚した。
放たれたスペルマは、日に焼けた汀の肌を白く汚した。尻はもちろん、腰から背中にまで飛んでいる。神聖なものを穢してしまったという罪悪感が今更ながら押し寄せて、しかし、だからといって興奮が醒めるわけでもない。ただ、これ以上は時間的にも無理だ。とりあえず汚した箇所を拭き取ろうとしたが、それより先に汀が動いた。
汀は重たそうに体を捻って、尻にかかった俺の精を指先に掬い、まるで料理の最中に味見をするような自然さで口に含んだ。途端、酷く口元を歪ませて、不満そうに鼻の穴を膨らませる。
「おいしくない!」
「そりゃそうだろ。何だと思ってんだよ」
「岳斗さん、おれの舐めてたから、おいしいのかと思って」
「旨いわけねぇだろ、こんなもん」
「じゃあなんでおれのやつ飲んだの?」
「なんでってお前……」
汀の体に飛び散らかった精液を拭いてやりながら、俺は言葉を濁す。
「そういうもんだからだよ」
「またそれ? どういう意味?」
「あー、相手によっちゃあ不味くなくなるってこと。後は俺がやっとくから、お前もう寝ろ。明日学校だろ」
まだ何か言いたそうな汀を遮って寝かせ、その寝顔を見ながら俺も眠りに就いた。平和そのものという感じの寝顔だったが、目元が少し赤くなっていて、噛みしめすぎた唇は傷ができていた。出来たてのかさぶたを指でなぞって口づけたが、血の味はしなかった。
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