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九月第二週①-② ※※※
汀が出た後で、俺もシャワーを浴びた。ゆっくり浸かるつもりでお湯を溜めたのに、ついさっきまで汀が使っていたバスタブなのかと思うと妙な気分になって落ち着かず、結局シャワーだけで済ませた。
二か月ぶりにドライヤーで髪を乾かして部屋に戻ると、汀はテレビをつけたままダブルベッドを占領していた。前開きでボタンが付いている、ワンピースタイプの白いパジャマから、日に焼けた長い脚がにょっきり覗く。
「寝てんの?」
耳元で囁くと、汀はむずかって寝返りを打った。先週も同じようなことがあった気がする。俺はベッドに横になって、汀を抱き寄せた。垂れ流しのテレビは、情報バラエティ番組が終わり、ニュースに切り替わった。チャンネルを替えても、この時間はニュースかスポーツしかやっていないらしい。そのまま流していてもよかったが酷く耳障りに思えて、結局消した。
俺の腕に抱かれて、汀は何の警戒心もなく眠っている。安心して、落ち着き払って、俺が何か良からぬことを企んでいるんじゃないかなんて微塵も疑わずに、全てを委ねて眠っている。しかし、この唇の艶々していることといったら、どんな宝飾品よりも価値がある。風呂上がりだからだろうか、一層艶やかに光沢を放って、見る者を惹き付ける。
「キスしたくなる口してるよな、ほんとに」
見ているだけで満足できるわけもなく。
「なんかいい匂いもするし。ほっぺなんかふわふわで」
まろやかな頬に鼻先をつけて肺いっぱいに吸い込めば、まるで花畑にいる気分だ。
「はぁあ……もう、なんでこんなに可愛いんだろうな。全部食っちまいたいよ」
想像だけで喉が鳴る。この柔らかい肉は、一体どんな味がするのだろう。強く抱きしめてみて、ふと、汀の体が異様に熱を持っていることに気付いた。はっとなって顔を上げると、火を噴きそうなほど赤面した汀と目が合った。その瞳は、たっぷりの涙で潤んでいた。
「あー……その……」
汀の熱がこちらへも伝播する。背中が炎の走ったように熱くなって、噴き出した汗が滝のように流れた。あまりにも気まずくて離れようとすると、汀が俺の腕を掴んだ。縋るように掴んだ。なのに、何も言わない。訴えるような目で見つめてくるだけ。
「……悪かったよ。みっともないとこ見せた」
先に口を開いたのは俺だ。汀は、きょとんと小首を傾げる。
「みっともないって、何が……?」
「……いつから起きてた?」
すると、汀は決まり悪そうに目を伏せた。
「……最初から……」
「最初から!? 狸寝入りかよ!」
今のでなぜか緊張が解けた。自棄を起こしたとも言う。
「お前、寝たふりとか卑怯だぞ。なんでそんなことすんだ」
「さ、最初はほんとに寝てたんだよ! でも、起きるタイミング分かんなくなっちゃって……そ、そしたら、岳斗さんがあんなこと……」
恥ずかしそうに口籠り、ますます顔を赤らめる。
「が、岳斗さん、ほんとはあんなこと思ってたの……? キスしたくなる口って何? 食っちまいたいってどういう意味――」
これ以上は居た堪れない。俺は、キスしたくなる口を塞いで黙らせた。見た目は陶器のようなのに触れると柔らかい唇を割って、強引に舌を捻じ込む。汀はすっかり大人しくなった。俺の腕を掴む手にも力が入らない。力なくベッドに身を沈ませて、小さな口を懸命に開いて、口の周りをベタベタに濡らして、俺の舌と唾液を受け止めるだけだ。
「お前、セックスって知ってるか」
「せっ、くす……?」
キスの余韻からか、汀はやや焦点の合わない視線を彷徨わせる。
「本当に特別な相手としかしないやつ。まぁ、お前が知ってても知らなくても、どっちでもいいんだけど」
俺は、汀のパジャマの裾に手を忍ばせて、太腿を撫でた。
「俺は、お前の全部が欲しいよ」
何も知らないくせに、汀は小さく頷いた。
俺は、太腿にあった手を、ゆっくりと上に滑らせた。本能的にか、汀は脚を閉じ、膝をすり合わせた。くすぐったいのか、僅かに身を捩る。
「ね、ねぇ……何、するの……?」
「俺がやるから、お前は気にしなくていい」
「で、も……ひゃっ!?」
下着越しに尻の谷間を撫でると、汀は可愛い声を上げた。
「もっと脚開いて」
膝裏を持ち上げ、股を開かせた。薄橙の地に貝殻の模様が入った下着が露わになる。汀が脚を閉じようとするのをしっかり押さえて、俺はもう一度、尻の谷間の中心をそっと撫でた。
「やっ……、なんで、そんなとこ」
「大丈夫だから、任せとけ」
「うぅ……こんな恰好、やだよ……恥ずかしい」
「じゃあ、後ろ向きにするか」
俺は、汀の体を引っくり返して四つ這いにさせ、見やすい位置に尻の高さを調整した。裾の長いパジャマは邪魔になり、脱がしてしまった。汀は、下着一枚纏っただけの姿で尻をこちらへ向けているわけだが、この恰好は恥ずかしくないらしい。
俺は、あえて下着を脱がさずに、薄い布の上から汀の固い蕾を撫でた。表面を優しく撫でて、時々、軽く突ついてみたりする。汀は、額をベッドに押し付けて、俺の指から逃げるように尻を揺らした。
「んっ……んん……」
「痛かったら言えよ」
「い、痛いとかじゃ……変な感じする……」
「変って?」
「……おしりが……キュッてなる」
「ふーん」
少し強めに押し込むと、汀は「きゃっ」とか弱い少女のような声を上げて、ビクッと腰を引いた。
「どうした」
「な、なんでもな……」
強がりながらも這いずって逃げようとするので、俺は汀の腰を捕まえて、さらにぐりぐりと穿るように擦った。丸い尻が面白いように震える。
「んんん……んっ、んーっ、やだっ、やだぁっ」
汀はシーツにしがみついて悶えた。混乱に乗じて、俺は下着を引き剥がした。健康的な小麦色の双丘が、薄明かりの下に晒される。焼きたての香ばしい匂いが漂ってきそうな、ふっくらとしていて艶のある、それでいて、混じり気のない透明感も併せ持つ、素晴らしく可愛らしいお尻。特別天然記念物に指定したい。
いきなり蕾に触れるなんて下世話なことはせず、まずは蟻の門渡りを優しく刺激した。くるくると円を描くように撫でて、リズミカルに軽く叩いてみる。同時に、ぷっくりとした小さなフグリも撫でる。サイズ感は仔猫のそれと変わらず、とても愛らしい。汀の肌はどこもかしこもつるつるしているが、こんなところまで滑らかだなんて、俺は感動した。
「んっ……ぁ……」
汀の声が、僅かながら色を帯びてきた。背中が弓なりに反って、ぶるりと震える。強く押し込むように会陰を圧迫すると、萌え立つ芽からとろりと夜露が溢れた。シーツにつく前に掌に掬い取り、指を濡らして蕾を撫でる。
「ひゃっ!?」
汀は悲鳴を上げて振り返り、両手で尻を隠した。なんでそんなところを触るのか全然意味が分からない、と言いたげな顔だ。「大丈夫だから」と一応安心させるが、言葉だけでは足りないこともある。
俺は、弁当とは別の袋に入れてもらったあるものを、リュックから取り出した。一つは、あのカラフルなパッケージの小箱だが、もう一つ、買っておいたものがある。旅行用のミニボトルに入った、ベビーオイルである。蓋を開け、汀の尻に直接ぶっかけた。汀は腰を引くが、俺はそれを追いかけていって、両手で尻を撫で回しながらオイルを馴染ませた。
乾いてきたら、オイルを足す。垂れてしまったらもったいないなんて貧乏くさいことは考えず、じゃぶじゃぶ使った。こういうのは多ければ多いほどいい。ぬるぬるのオイルを塗り込めるように、フグリから会陰、そして蕾の表面へと、何度も往復して撫で摩った。
マッサージのような手付きでしばらく続けていると、強張っていた汀の体が緩んでくる。固く閉じていた蕾も綻んでくる。淡く色付いて、今にも開花しそうな様子でヒクついている。俺は、右手にたっぷりオイルを取り、同時に汀の尻にもオイルを垂らして、人差し指の先をそっと滑り込ませた。
驚くほどすんなりと入ってしまった。あまりにも抵抗がなかったので、汀も指を入れられたことに気付いていない。そのまま指を潜らせて第二関節の手前まで入ったところで、汀はようやく反応を示した。
「っ……?」
けれど、何が起きているのかということは、いまいち分かっていないらしい。俺はもう、一気に指の付け根まで突っ込んでしまった。
「っ……!? な、なに? なんか……、ひぁッ!?」
指を突っ込んだままぐるりと回して壁面を撫ぜると、汀はビクビクと腰を反らした。
「んゃ、や、やだぁ……」
「痛いか?」
痛いわけがないと分かっていて、意地悪な質問をした。
「い、いたくない、けど……な、なんか、出ちゃいそ……」
「なんかって何だよ」
俺は一旦人差し指を抜き、中指を添えて挿し込んだ。今度はいくらか抵抗があった。弾力のある花蕊が、異物を追い出そうと蠢いて圧迫してくる。キツいことはキツいが、入れないほどではない。そして、一度付け根まで入ってしまえば、後は案外滑らかに進んだ。
下ろしたてのよく締まる硬い輪ゴムを伸ばすような手付きで、開花したての繊細な花弁を優しく解きほぐす。傷を付けないよう、丁寧に、慎重に。もしも乱暴にして花弁を破きでもしようものなら、怖がられて二度と触らせてもらえなくなるかもしれない。
汀は、枕を抱きしめて顔を埋め、高く上げた尻を揺らめかせた。これで誘っていないなんて無理がある。俺はまたオイルを足して、指を抜き挿しするスピードを速めた。リズミカルに突きながら、潤んだ花蕊をぐりぐり擦る。お腹側の割合浅い箇所に見つけた、充血した小さい豆のようなものを圧迫すると、「いやッ」と叫んで汀は身を捩った。
「ここがいいんだ?」
「やっ、やだっ、よくないっ」
「でも、お前のお尻、キュッてしてるぞ」
二本の指で小豆を挟み、転がすように刺激する。汀は、仔犬のようにクンクン鳴き、一層いやらしく腰をくねらせた。
「んーッ……やだっ、そこいやっ、漏れちゃうっ」
「イキそうか」
「ちがッ……ん、わかんないっ」
最初は固く閉ざしていた蕾が、いまや艶やかに開花して、その瑞々しい果実を無防備に曝け出している。甘やかに匂い立つ、豊潤な香りが堪らない。誘われるままに俺は服を脱ぎ、本懐を遂げようとした。
「ま……まって」
果実を摘み取るナイフの切っ先を押し当てたところで、汀が言った。重そうに頭をもたげて、不安げにこちらを振り返る。
「なに、するの……?」
本当に何も知らないのにここまで耐えてくれたのかと思うと、俺は胸がいっぱいになった。この何も知らない純粋無垢な子供に、この俺が、全てを教え込むのだ。
「コレを挿れるんだよ」
俺は汀の手を、小さくて柔らかい手を取って、厳つく張った己のものを握らせた。
「これ……」
汀の声がか細く震える。
「む、むり……」
「大丈夫だって。指も余裕で入ったろ」
「で、でも、こんなのむり……おしり、壊れる……」
汀はすっかり怖気付いてしまった。しかし残念なことに、俺は全く萎える気配がない。俺は、汀の体を引っくり返して仰向けにし、宥めるように頭を撫でた。
「どうしても怖いか?」
「うん……」
汀は怖々と目を細め、俺の下腹部を見やる。
「だって、そんなの……は、はいんないよ、絶対」
「俺はお前の全部が知りたいんだけど?」
「そ、それは……おれだって……」
俺は、汀の上へ覆い被さるようにして抱きしめて、頬や瞼、もちろん唇にもキスを落とした。緊張を和らげるべく、ひたすら優しく甘やかす。じきに、汀の頬は紅を差し、その眦はうっとりと緩み、口元は甘く綻んでいく。
「言っただろ、全部食っちまいたいって」
「岳斗さん……」
「お前が欲しいんだよ」
俺は、手元に用意しておいたラテックス製のスキンを自身に被せた。汀には見えない位置で、素早く事を進めた。後はもう、実ったばかりの若い果実に口をつけるだけである。
汀を抱きしめる姿勢のまま、手探りで腰を進めた。ちょん、と先端が触れて、汀ははっと目を見開いたけれども、それよりも早く、俺は自身を押し込んだ。汀は、両手を俺の背中に回して、力いっぱいしがみついた。
「おっき……」
俺は、汀の形の良い広めのおでこに浮かぶ脂汗を舐め取り、しっとりと湿った前髪を梳いて撫でた。
「ゆっくり深呼吸しろ。楽になる」
「ぅ……ふ……」
苦しげな息遣いが耳元で繰り返し聞こえて、俺は滾るものを抑えられなかった。最も太く張り出しているところを収めたら一旦止まろうと思っていたのに、もっと奥を味わいたくなった。
「ん゛ッ……ぅうっ……」
可哀想に、汀は苦しそうに呻く。
「悪い。もうちょっとだから……」
「んぅ゛……でも、もう……」
不意に、行き止まりに突き当たった。まだ三分の二程度しか収まっていないのに、これ以上入れない。無理に奥へ進もうとすると、汀は猛烈に痛がった。
「おなか、やぶれちゃうよぉ……」
汀が小さいせいか、俺が大きいせいなのか。しかし俺は至って普通サイズのはずだ。こんなことは今までになかった。けれど、汀の薄く小さな腹の中を、一分の隙もなく俺自身が満たしているのかと思うと感慨深く、泣きたくなるくらい興奮した。
「がくと、さん」
「ん? 腹、苦しいか?」
「ちが……あの……これが、せっくす……?」
汀は、何が恥ずかしいのか口籠った。この期に及んで、いつまでも初々しい。
「ああ、セックスだな。お前、意味分かって言ってんの」
「……うん」
汀ははにかんで笑った。
「好き。岳斗さん」
黒い双眸が、幸福の色に滲んでいる。俺はそっとキスをして、強く抱きしめた。
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