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九月第三週① ※

 汀は、石垣島にもう一泊したいとおばあちゃんに頼み込んだが、却下された。フィリピン沖で台風が発生した影響でフェリーがいつ欠航になるか分からないから、帰れるうちに早く帰ってこいとのことだった。ニュースを見ていないのかと叱られた。    そんなわけで、二日ぶりに島へ帰ってきたわけだが、台風が発生したなんて疑わしいくらい、海は穏やかで空は晴れ渡っていた。汀は普通に学校へ行き、俺も今まで通り浜辺でのんびりしたり、宿の雑用をしたりして過ごした。とはいえ、台風の影響で宿泊客は一人もいなかった。    ある朝目覚めると、明らかに風が強い。浜へ下りてみると、白い波濤が立っていた。ニュースで言っていたが、高潮注意報が発令されているらしい。いよいよ台風が近付いている。俺は、おばあちゃんに頼まれて水や食料を買い足しに行き、庭に出ていたテーブルや長椅子や物干し竿を物置に片付け、植木鉢を屋内に避難させた。    翌日は、朝から雨が降り続いた。午後からは強風が吹き荒れ、学校は休みになった。俺と汀は、家中の雨戸という雨戸を閉めて回った。ガラス戸に内側から板を打ち付けて固定し、古新聞や雑巾を詰めて隙間を塞いだ。汀は、合羽を着て海の様子を見に行こうとして、おばあちゃんに烈火のごとく怒られていた。    夕食も風呂も早めに済ませ、床に就いた。夜が深まるにつれ、風はますます激しく暴れ狂い、雨は猛烈に戸を打った。台風が最接近しているのか、もしくは上陸しているのか、詳しいことは分からないが、とにかく凄まじい嵐だ。ラジオを一台貸してもらったが、壊れていた。   「岳斗さんってば!」    障子を開けて顔を覗かせ、汀が焦れたように叫んだ。   「悪い。聞こえなかった」    何しろ、雨戸もガラス戸もガタガタガタガタ暴れてうるさいのだ。暴風雨から家を守ってくれているのだから感謝したいところではあるが、あまりに騒々しい。汀はぷくっと頬を膨らませて不満を示しつつ、障子を閉めて俺の布団に入り込んだ。   「何回も呼んだのに」 「悪かったって。雨がうるさいからさ」 「いつでもちゃんと気付いてくれなくちゃやだ」    汀は、おもむろに抱きついてきた。腕を回し、頬をすり寄せて甘える。   「何だよ、こんな時に」 「だって、帰ってきてからちゅーもしてくれないし」 「そんなことないだろ」    尖らせた唇に、俺は軽くキスをする。   「ん……こーいうのもいいけど……」    汀は、大胆に舌を入れてくる。何がそんなに美味いのか、目を瞑り、鼻を鳴らして、俺の唇や舌を食む。俺は、自然と汀を押し倒していた。   「……明日、どうせ休校だよ」 「台風だぞ」 「こんなにうるさいんだもん。気付かれないよ」    俺は、枕元に置いたリュックのチャックを摘まんでゆっくりと引き、チューブタイプの潤滑ゼリーを手に取った。   「あは、何それ。そんなの買ってたんだ」 「赤ちゃん用は使い切っちゃったからな」    ボタンを一つずつ丁寧に外してパジャマを脱がし、薄い腹を撫で上げて胸の飾りに触れると、汀はくすくす笑いながら、くすぐったそうに身を捩った。   「やぁだぁ。なんでいっつもおっぱい弄るの?」 「触りたいから」 「なんで?」 「なんでって……可愛いから?」 「んふ、何それぇ」 「お前はどうなんだよ。ここ、何か感じる?」    平たい胸にくっついた平たい乳輪を、すりすり撫でる。平たいが、感触は皮膚とは随分違っている。軽く触れるだけで指先が沈むほど柔らかく、繊細で、桜桃の皮のように艶々している。暗くてよく見えなくても、触感だけで乳輪と皮膚の境目が分かる。   「……なんにも?」    そう強がる汀だが、しばらく乳輪を撫でていると、だんだんぷっくりと膨らみを帯びてきて、健気にも乳頭を持ち上げ始める。   「勃起してる」 「し、しらないよぉ、そんなの……」 「気持ちいいとおっぱいも勃起するんだよ」 「ん、ん……」    くるくると円を描くように、尖り始めた乳頭に沿って撫でる。乳輪部分は柔らかいのに、乳頭は固い。触っていても気持ちがいい。   「んぁ……ん……んっ……」    汀は喉を反らし、ゆっくりとかぶりを振った。   「ゃ……くすぐったい……」 「くすぐったいところって、性感帯らしいぞ」 「せーかんたい?」 「触るとエッチな気分になるとこ」    つん、と優しく尖頭を叩くと、汀はビクッと胸を反らした。   「ひゃっ……!?」    思わずといった具合に声が出て、恥ずかしそうに口を閉じ、恨めしそうにこちらを見る。眉間に皺が寄るのすら愛しく思えてくるから不思議だ。   「おっぱい、気持ちいいな」    生ったばかりの桜桃のように丸くて小ぶりな乳頭を、指先で捏ね回す。くりくりとくすぐって、かりかりと引っ掻いても、十分な弾力のあるそれは綺麗に元の形に戻る。きゅ、と二本の指で摘まみ上げ、優しく転がしながら引っ張ってみると、汀は両手を口元に添えて声を押し殺す。   「やぅ……ぅ、んぅう……やだってばぁ……」 「もうくすぐったくないだろ?」 「ふ、ん……でも……変になりそ……」 「変になっちゃえよ。ちょっとくらいうるさくしても、聞こえやしねぇって」    廊下の向こうの雨戸の向こうは大変な嵐だ。割れそうな勢いでガラス戸が揺れ、荒れ狂う風の音が轟き、猛烈な雨が屋根を叩く音が響く。何もかも、この家までも、あるいはこの島までもが、どこか遠くへ吹っ飛ばされ、流されてしまいそうだった。けれど、汀の押し殺した嬌声や、あえかな吐息や、衣擦れの音や心臓の鼓動だけは、俺の耳によく届いた。    育った桜桃を親指と中指で挟んで揉みながら、尖端を人差し指で撫で擦る。弄れば弄るほど、固く尖って張り詰める。尖端だけと言わず、微かに開いた穴の中まで、爪の先でくすぐった。汀は、腰をくねくねと騒がせ、胸を反ったり丸めたりして暴れた。   「やッ……も、おっぱいやだぁ」 「俺はおっぱい好きなんだけどな」 「んゃ……ッ、でもっ……」 「こんなに可愛いおっぱい、なかなかないと思うぞ」 「そ……そう?」 「うん。ずーっと触ってたい」    口づけで甘やかすと、汀は嬉しそうに啄んできた。小鳥のような口をすっかり塞いで、唇の裏側から上顎の奥の方まで、俺は舌を捻じ込んだ。そうしながら両手はいまだ胸元にあり、ピンと張った乳首を少々強めに弾いた。   「っ……!?」    汀は目を剥いた。プリンのような弾力のある乳首は、弾かれる度にぷるぷる震えて、心なしか大きくなる。俺が少し指を離すと、汀は切なげに胸を反って追いかけてくる。意識してそうしているわけではないのだろうが、求められているようで興奮した。    汀は、胸を反らせながら腰もガクガク跳ねさせて、下腹部を俺の腹に擦り付けた。その余裕のない動きに限界が近いことを知り、俺は強引に舌を奪い取って唾液を吸い、より激しく乳首を弾いた。   「ふぁっ……はぁっ……っ」    唇を離すと、強張っていた汀の体はぐったりと弛緩した。口の周りを唾液で濡らして、ゼーゼーと肩で息をする。    ズボンに手をかけると、汀は腰を浮かそうとして体をもぞもぞさせるが、力が入らないらしくて結局できず、俺が腰を抱いて脱がしてやった。露わになった下着には、見覚えがある。   「お前、早速これ履いてんの」    石垣島へ行った時に、替えの下着がないので新たに買ったものだ。白と青と赤を基調としたマリン柄が全面にプリントされた、ちょっと子供っぽいデザインの下着だ。ちなみに俺もおそろいで買った。    まだ一回洗っただけの新品同様の下着の、僅かに盛り上がった中心に、白っぽい染みがじんわりと広がっている。布の上からそっと撫でると、ビクビクッ、と汀は震えた。   「やッ……!」 「ごめんごめん」    敏感すぎるのも考えものだ。ゆっくりと下着を下ろすと、夜露に濡れた幼芽が顔を出し、糸を引いた。潤滑ゼリーなんか使わなくても、この露だけで十分濡らすことができるのではないか。実際、汀の太腿を持ち上げて脚を開かせてみると、後ろの蕾までしとどに濡れて、橙色の豆球に照らされて光っていた。   「んん……このかっこ、やだ……」    恥じらって閉じようとする脚を無理やり開かせ、夜露を蕾に注ぎ入れる。すると、汀は自ずから脚を広げて、ねだるように腰をくねらせる。布団の上で舞うようなその妖艶な腰付きに、俺は目を奪われた。   「んんっ……ふぁ、あ、んぁ……っ」    お腹側にある小豆のような膨らみを、指先でこりこり転がし、押し潰すように圧迫し、また摘まんで引っ掻いて、挟んで扱いてぐりぐり擦る。これが、Gスポットというやつか。汀は、足のつま先でシーツを握りしめて腰を浮かし、抽送を手伝うように腰を動かす。両手は、縋り付くように俺の頭を掴む。過呼吸気味の嬌声が、嵐の音を掻き消していく。   「やぁ、っ、あ、ゃ、ぁあ……!」    甘く掠れた高い声が俺の鼓膜を揺さぶり、胸を逸らせる。もっとずっと、この声を聞いていたい。もっともっと、乱れた姿を見せてほしい。   「んゃぁっ……も、だめ、……ッ、だめぇ……っ!」    きゅうう、と中がキツく締まり、いよいよ上り詰める寸前。障子の向こうに灯りが揺れて、床板の軋む音がした。

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