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卒業式2
何と今日は魔王様ご夫妻が来賓で来られてるんだ。王妃様のアスラ様が魔族学校を見たいとおっしゃられ、溺愛する王妃様を一人で行かせるはずがない魔王様が、卒業式の来賓としてご一緒に来られたというわけ。
僕は卒業生代表であいさつをし、答辞も読んだ。そしてこのパーティーにも参加される魔王様ご夫妻の接待もしなければならない。
本当にコウに付き合って遊んでる暇はなかったんだよ。
「遅かったわね。」
「母さん。いつものごとくコウの所為だよ。」
「コウくんねぇ・・・良い子なんだけど相変わらず残念なのね。」
「あらぁ?誰の話?卒業おめでとうリン。」
うっ?!カグヤ様まで来てたのか??!
「アキさんの息子のコウくんよ。リンと同い年で契約精霊はウンピョウだし、なかなかの力も魔力もあるんだけど、脳筋で全体的に何か残念なのよね。リンにやたらと勝負を仕掛けて来るんだけど、十回に、いや二十回に一度勝てるかどうか?な子なの。」
「・・・ふうん?ちょっと興味あるかも?」
「カグヤ様、やめてください。カグヤ様が興味を持つほどのヤツじゃないですよ。」
「コウくんはねぇ、リンに惚れてるから勝ちたくてしょうがないのよ。連勝したら恋人になるんだっけ?」
「はぁ?母さん、何で僕が二回負けただけでコウの恋人にならなきゃなんねぇんだよ?せめて十回勝負で半分以上勝ち越しとかだろ?」
「・・・リンは、コウくんが十回勝負で半分以上勝ち越したら恋人になってもいいの?」
「まぁ、そんな事は今の時点では有り得ないですからね。もしそうなったら真剣に考えるくらいはしますよ。今は考える気にもならないです。」
「面白いわね。」
「ジンの契約者でしょ?ジン共々鍛えがいがありそうね。」
「あ~あ、リン、覚悟なさい。カグヤちゃんとココがコウくんとジンを鍛える気になったみたいよ?」
「はぁ?何でそうなるんですか??!!!」
「仕方ないわよ。カグヤちゃんとココは残念ないい男を更生させて本当にいい男にするのが趣味だから。」
マジかよ?!そう言えば何かと残念だったカイさんがカグヤ様のおかげですげぇいい男になったって評判だったな。それでもどこか残念な雰囲気があるカイさんはある意味すげぇけど。だからカグヤ様に飽きられずにいるのか?
て、マジでカグヤ様がコウを鍛えるの??!
僕、何かヤバくない??
「まぁ、そのコウとジンに会ってから決めるけど、あたしがコウに付いたら覚悟なさいね。」
カグヤ様、ウインクはやめてください・・・
あっ、魔王様ご夫妻だ。
「リンくん、卒業おめでとう!」
「王妃様。ありがとうございます。」
「もうっ!公式な場以外ではアスラでいいって言ったじゃん。」
「ここは公式な場でないかどうか微妙だと思いまして。」
「リンの判断は妥当だと思うぞ。」
「魔王様。本日は誠にありがとうございました。」
「リンくんはすごいな!卒業生代表って首席って事だろ?卒業したらどうすんの?」
「はい、実はユイ様が学んでいる建築デザインの先生の元でしばらく一緒に勉強させていただく事になっております。僕はデザインというより、生活の利便性や要塞としての機能性を追求したいのですが、建築の基礎も教えていただけるという事なので。」
「へえ?じゃあユイくんがデザインして、リンくんが機能性を追求した城が出来たりするかもって事?最高じゃん!ぜひがんばって欲しいなぁ。」
「ありがとうございます。がんばりたいと思っております。」
「リン、勉強だけしてたら本当にコウくんに半分以上勝ち越しされちゃうわよ?」
「えっ?何なに?ランさんどういう事?」
母は、魔王様ご夫妻にさっきの話をした。
「えぇっ?!本当にカグヤちゃんとココがコウくんに付くの??」
「コウくんがカグヤちゃんのお眼鏡にかなったらね。」
「まぁ、確かに面白そうだな。」
魔王様まで面白がってる?!マジで??何で僕とコウの事にこんな魔族の頂点な方々が興味持つんだよっ?!
ん?何やら入口付近が騒がしい。
「あっ?あれカグヤちゃんとコウくんだよね?」
パーティー会場の入口でココにベルトを噛まれて運ばれてるコウジン??!!!
「リン!この子気に入ったからしばらく預かるわ~!あっ、兄貴、ちょうど良かった。アキさんに言っておいてくれない?騎士団の見習いに入る予定らしいけどちょっと先になるって。
う~ん、一年以上になったらあたしが飽きると思うからそれ以内?早く物になりそうなら半年くらいで返すわ。」
コウの父親であるアキさんも上位魔族で騎士団の団長様なんだ。て、そんな説明してる場合じゃないよっ?!本当にカグヤ様がコウを鍛えるの??
何でこうなった??!!!
「仕方ないな、アキに伝えてやろう。
で、リン?こうなったカグヤを止めるのは無理だしから覚悟をした方がいい。コウは強くなるだろう。根性はあるみたいだしな。さて、お前はどうするんだ?」
ちょっと待って?今日は僕の卒業式で、卒業後は建築の勉強をする事に決まってたはずだよね?なのに何でコウとの勝負の為に鍛えなきゃならないの??
おかしくない??
「魔王様、お言葉ですが僕は別にコウと戦いたいわけじゃありません。今までも迷惑だったんです。恋人になるとかもコウが勝手に言ってるだけで、僕は全くそんな気はないんです。」
「なら、半分以上勝ち越したら考えるとか迂闊な事を言ったお前が悪い。万が一でもそうなったら困るような事を口に出すな。単なる比喩のつもりでも、カグヤが聞いて面白がった時点でそれは実現可能な未来になるんだよ。あいつは固定観念の破壊神だからな。」
「そうそう、カグヤちゃんはこっちが不可能だって思ってる事をやすやすとやり遂げるから。」
ぐっ、魔王様のお言葉が正論すぎて反論出来ないし、王妃様が追い討ちをかけて来る・・・そして母が言う。
「リン、どうしてもコウくんの恋人になるのが嫌ならあなたも本気で鍛えなさい。何なら私が手合わせの相手をしてあげるわ。
まぁ、コウくんが今のリンの実力以上の力をつければ恋人になる気があるのなら、そのままの方がいいのかもね?」
「・・・ちょっと考えさせてください。」
その後は、何とか予定通りに卒業パーティーをこなした。魔王様も王妃様とともに始終ご機嫌でいらしたので、僕の魔族学校最後の仕事は大成功だったのだろう。帰り際には、
「まぁ、がんばれ。何なら協力してやる。」
という、非常にありがたいお言葉もちょうだいした。
コウはパーティーに出席する暇もなくカグヤ様にどこかに連れて行かれた。どんな特訓を受けてるんだろう?
僕はどうするべきなんだ?
建築の勉強を教わりに行くのは一週間後からだ。その間にじっくり考えてみる事にした。
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