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前魔王城 コウジンvsリンネル 2

 前魔王様の城に通うようになり、半年が過ぎた。ロム先生に教わっている建築学は順調だ。設計図も読めるようになり、僕は材料や構造、施工についてより詳しく学んでいる。ユイくんは設計図を描く練習中だ。 授業後には何というか、大変豪華なメンバーに特訓していただいている。前魔王様はもちろんの事、母、シグ様、更には魔王様まで時々参加してくださるんだ。正直ただの子どもの喧嘩なのに申し訳ない。 僕もネルもかなり強くなったと思う。ただ、特訓に付き合ってくださるメンバーは、基本僕寄りな戦い方なんだよ。みんな頭を使って戦うタイプ。唯一前魔王様だけは本能のまま戦うタイプだけど、恐ろしいほどにセンスとカン、更には運までいいので脳筋とは言えない。 そう、コウがカグヤ様に鍛えられてどこまで成長しているのかは分からないけど、根が脳筋のまま強くなっているはずだ。なのにそんな相手との戦い方についての対策が出来ていないんだ。 カイさんはそれに近いんだけど、カグヤ様に絶対服従しているので今回もコウ側についている。 後はコウの父親のアキさんくらいだが、流石に息子の側に付くだろう。  そんな感じで脳筋対策が出来ないまま時が過ぎ、コウが帰って来てしまった。 ちょうど建築学の授業が終わった時間で、コウにしてはなかなかのタイミングだ。前魔王様城の庭に出る。 「リン!待たせたなっ!!勝負だ!」 ・・・うん、性格は変わってないみたいだな。 それより、何このギャラリー?!! コウ陣営のカグヤ様、カイさん、アキさんと、僕陣営の前魔王様、レンさん、ユイくん、ロム先生まではいいとして、魔王様、アスラ様、母、シグ様・・・が次々と顔を出す。どんな連絡網だよっ?! そしてこの面子!国家レベルの試合みたいになってるんですけどっ?! 何度も言うけどただの子どもの喧嘩だよ??! 「ほらほら、観客も揃ったし、始めましょう!気絶か戦闘不能とみなされた場合はもちろん負け。後はそうねぇ、拘束魔法かなんかで体の自由を奪われた場合は、一分間そのままだと負けって事でどう?時間は最大三十分。それ以上になると引き分けね。」 「はい、カグヤ様。それでいいです。」 「オレも!!」 「よし!では、始めっ!!」 仕方がない。やるからには勝つからな! 「ネル、完全憑依!」 「了解。」 ネルが僕に向かって飛び込んで来る。ぶつかる瞬間にネルの姿が消え、僕の中にネルの気配と力が満ちる。猫科猛獣の血が滾り、否応なく戦闘モードに入る僕。 体中の血が沸き立つ。 その熱が背中に集中し、肩甲骨の辺りから肉を破って放出された。同時に髪の毛の色が黒から白に変わり、ユキヒョウの耳と尻尾が生える。 リンネルとなった俺は、純白の翼を先まで伸ばし、バッサバッサと羽ばたいた。 コウも完全憑依してコウジンとなり、剣を構えて飛び込んで来る。 以前のような隙はない。 斬り込んできた剣を咄嗟に作った氷の盾ではじく。コウジンはすかさず体制を立て直して更に剣での攻撃を仕掛けてくる。 僕は氷で矢を作り、コウジンの後ろから一斉に矢の雨を降らす。ブンッと剣を一振りし、氷の矢を消滅させるコウジン。 ん?今の何?魔法で矢を消したの?いや、違うな。風圧で薙ぎ払った??何だよこの力技!こういう技のシュミレーションが出来てないんだよな。 おっと、剣捌きもすげぇわ。きちんと剣を使いこなしてるじゃないか。前みたいな隙が全くない。懐に飛び込むのは無理か?とりあえず身体強化はかけているし、一発入れば勝てるんだけど。コウジンは支援魔法は使えないはずだし。 まともに戦うとヤバそうなので、両手と両足を氷で拘束してみる。すぐさま両手の拘束を石に叩きつけて割り、剣の柄で両足の拘束も割る。 そりゃそうだよな。流石に以前に食らった攻撃は対策を立ててるよな。けど、僕だって魔族のトップクラスの方々に特訓してもらったんだ。一位のカグヤ様はコウに付いたけど、二位から五位までの名だたる魔族は僕の味方なんだ! コウが拘束された氷を割っている間に近寄り、蹴りを入れる。完一発で氷から解放され、後ろに飛び退いて防ぐコウに、ユキヒョウの長い尻尾を巻き付け引き寄せた。 今まで、僕から故意に肌が触れ合うまで近づく事はなかったので、勝負の最中だというのに戸惑うコウ。その隙に腹に身体強化をかけた拳を一発ぶち込む。 「ぐはっ?!!」 コウジンが倒れ、起き上がる気配がない。 「勝者、リンネル!!」 はぁ、何とか勝ったけどヤバかったぞ?これを後最低五回、最大九回やるのか・・・キッツぅ!!マジで口は災いの元だな。下手な事言うもんじゃない。 「リンくんおめでとう!!」 「アスラ様、ユイくん、ありがとうございます。でも正直ヤバかったです。」 「そうねぇ。リンが初戦であの手を使うなんて。私が教えた時には『誰がそんな手を使うか!』って言ってたのに。」 「もう、なりふり構ってられないからな。母さん、作戦会議付き合って。」 「「俺も参加したい!」」 「アスがそう言うなら付き合うか。」 「ええ、私もユイに付き合いますよ。」   マジか?!魔王様とシグ様まで?? 「よっしゃ!おれの城で作戦会議だ。カグヤ、明日もこの時間にな。」 前魔王様がカグヤ様に言う。 「了解。あたしたちも作戦会議ね。カイさん、コウジンをお願い。」 カイさんが肩にコウジンを担いで、カグヤ様、アキさんとともに帰って行った。

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