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響也side*1
初めて会った日。
楓から目が離せなかった。
父さんが、再婚を意識してると言い出した時。
別にいいんじゃない、と言った。その後でオレの一つ上の息子が居ると聞いた。
……最悪。
今更、一つ上の兄が出来るなんて、冗談じゃねえっつの。
最初はそう思ったが、ふと、途中で何とか考え直した。
大学に入ったら一人暮らしをしたいなと思っていたし、我慢するのは二年ちょい。あまり家事の出来ない父さんを一人にしなくて済むから、家を出るのも気楽だ。
……我慢、するか。
そう思って、再婚を前向きに受け止めたら、一度会うことになった。
約束した日、待ち合せ場所に向かう途中。
「響也、ボタン」
父さんに開けたシャツの襟もとを突っ込まれるが「これでいいよ」と答えた。ピアスも、普段学校でつけるより、目立つのにした。
今更兄貴とか呼べるはずもないし、要らない。
楓という名前らしいから、もう呼び捨てで行く。最初が肝心。
周りの友達も皆、同じようなことを言ってて、最大限に柄の悪い態度で行くことに決めていた。
間違っても可愛い弟なんて立場に陥らないように。……まあオレ、そんなタイプじゃねえけど、念のため。
遠くから見た、母になるかもしれない人は、線の細い綺麗めな感じ。
隣に立ってる楓は――――……こっちも、遠目では、細めのイケメンぽいな、という印象。
「――――……」
最初に父さんを見て軽く挨拶した楓は、すぐに、オレを見た。
――――……少し、オレより、背は低い。
目が合った瞬間。
意味が分からない。
ドクン、と心臓が、大きく、揺れた。
は?
――――……何。
目が離せない。
楓も、目を、外さない。
男になんか興味はない。
――――……ないはずだった。だから最初は、意味が分からなかった。
その後の食事――――……オレと楓が向かい合わせ。
目に入ってくる、綺麗な、繊細そうな指とか。父さんに話しかけられて、何だか照れくさそうに話してる顔とか。
オレを見ると、息をのむみたいに、瞬きの増える、綺麗な、瞳とか。
押し倒して――――……オレのものにしたい。
そんな、強烈な欲を、会ったばかりの兄弟になるかもしれない男に抱くなんて。
正直、焦った。もう、確実にそういう感情だと分かってすらも、意味が分からない。
初めて楓と会った日から。
どんな女とシていても、楓が浮かぶ。あいつは、どんな顔をするだろう。どんな声を、出すだろう。
結局その内、誰の誘いにも乗るのはやめた。
何度楓に会っても、その感覚は、消えるどころか、増すばかり。
内心ひどく戸惑ってはいたけれど、結婚に反対はしなかったのでスムーズに進み、父さんと住んでた一軒家に、母と楓が入ってきた。
思春期の男同士。
父さん達は、無理に仲良くさせようとはしなかった。
何となく四人で食事をする時に、絡めて話を振ってくるだけ。そういう時は適当に会話をした。
部屋は別だし、高校も違う。お互い部活や塾で、そんなには会わない。
でもたまに、洗面所やリビングで、二人になるタイミングがあって。
楓に、触れて、キスしたらどうなるんだろうと、ずっと思っていた。
楓も、オレを意識してる。それは、確かな気がしていた。
適当に発散してたのをやめたせいもあって、触りたい気持ちがどんどん高まる。
――――……それでも他で発散する気には、もうならなかった。
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